あんまりベタ褒めするとね、コメントプロレスやり辛くなるので控えめにしたいんですけどね。
こういう言葉が適切かわかりませんが、血の気が引きましたよ。
一体どんな生き方してたらこんな作品を書けるのでしょうか。
読みながら二駅乗り過ごす経験をはじめてしました。
朝吹さんの作品はですね、なんというか、平面がないのですよ。
極論すると小説、というより文章というものは紙に書くにせよモニターに表示するにせよ冷たく乾燥した平面上に文字を並べたものでしかないと思うのですよ。
もちろん、それではつまらないから書き手はそれが立体的なものに見えるよう、体温が感じられるよう、音が聞こえるよう腐心するわけですが。それはまったく簡単なことではありません。
読んでみてくださいよ、この短編を。
クラクラするわ。
境界の向こうには行ってはいけない というのが、この街の規則だった。街を囲う高い壁。だが、それを飛び越えようと多くの若者が命を落としていた。ヨカナンは友人のシラスとともに、飛行艇で壁を超え、首都フィラエへと行きたがっていた。その理由とは……。
壁があったら越えたくなるもの。たとえそれが、命を奪うものであったとしても。安住するものもあれば、冒険を求めるものもあり。ヨカナンとシラスが何を手にするのか見届けてください。後半の飛空艇シーンの描写がすごいです。僕は思わず手に汗握りました。
サイドエピソードでは、切ない恋物語も。「そばにいたい」という思いに切なさを感じました。
まず世界観が素敵です。大異変ののち大地は或いはせり上がり或いは沈降し、生き残った街は遥か崖の上に残されて互いに懸絶されています。街同士をつなぐのは唯一飛行艇のみ。少年たちはその飛行艇で街の外へ出ようと、爪に火を灯すようにして金を貯めチケットを手に入れます。主人公の少年が訪いたいのは別の街にある兄の墓。でもその旅立ちは一筋縄では行かず……。とこれからあとは本編をお楽しみいただきたいですが、相変わらず朝吹様の細部の描写が素晴らしい。特に飛行艇やその乗員が見てきたかのように息づいています。
描写が優れた小説を映像化してほしいという形容はそれはそれで褒め言葉と思いますが、わたしはむしろこの文章表現をそのまま味わい、脳裏にいきいきと浮かび上がるシーンを楽しんでほしいと思います。ぜひご一読ください。