Reborn【エッセイ】

Unknown

Reborn

 去年の12月7日の深夜に俺はアパートの近所の橋から飛び降りた。自殺したいと思ったからだ。飛び降りた際に俺は左ひざを粉砕骨折して手術とリハビリをした。命に別状は無かった。そして今年の3月2日に俺は退院した。この文章はいつものアパートの一室で書いている。


 自殺したいと思った明確な理由は100個くらいある。なので、いちいち書かない。一応、俺は精神病の持ち主だという事は記しておく。


 16才の時から29才の今に至るまで、ずっと日常の中に死をイメージしていた。少なくとも俺に幸福な未来なんて訪れないと思っていた。俺の最期は自殺しか無いだろうと思っていた。そして実際、去年の12月7日に行動に移した。


「ちょっと酒買いにコンビニ行ってくるわ」程度の軽い気持ちで衝動的に橋から飛び降りた。不思議な事に恐怖心は1ミリも無かった。本当にノリだけで自殺未遂をした。ヒモの無いバンジージャンプだ。


 精神科病棟で年を越して、2026年の3月2日に退院して帰宅して、俺の気分はどうだったかというと、とても落ち込んでいた。これからの人生に光は見えない。とりあえず俺はPC前の椅子に座って、最初にロングピースというタバコを吸って、缶チューハイの蓋を開けた。自分が生きている実感は希薄だった。


 ちなみに今回の俺の自殺未遂の騒動には警察も介入しており、「アルコール依存症」と診断名が付いている俺の車の運転免許は失効となり返納することになった。「こんな危険な奴に車の免許なんて持たせられない」という警察の判断だ。ショックだったが、これは妥当だろう。


 とりあえずアパートに約3か月ぶりに帰宅した俺は、スマホをチェックした。そして俺は友人たちに連絡を取った。総勢5人。内訳は男性2人、女性3人。その全ての人が俺に優しい暖かい言葉を掛けてくれた。「ずっと心配してた」と言ってくれた人や「生きててよかった」と言ってくれた人がいた。その人たちには感謝と申し訳ない気持ちの両方があるが、感謝の方がとても大きい。


 こんな俺のことを大切に思ってくれる他者がいることに俺は救われた。


 他者の存在だけが俺に生の実感を与えてくれる。他者の存在だけが俺に微かな希望の光を与えてくれる。


「生きててよかった」と心から思った。


 俺は、俺と携わった事のある全ての人に幸せになってほしいと本気で思っている。現実的には全員が幸せになる事は不可能なのかもしれないけど、こうして一緒に生きる事なら出来る。俺は文章という形であなたのそばにいつでも居る。本当はロックスターになりたいのだが、あいにく俺はギターが弾けないしビジュアルが良くない。なので文章という形で俺の気持ちを発露させている。


 自殺未遂をした俺の意見としては、自殺は否定はしないけど肯定もしない中立の意見だ。過去に俺の友人が自殺した。本音としては、ずっとくだらない話をしていたかった。だけど、その友人は自殺したことによってもう2度と痛みや辛さを感じなくて済む。だから複雑な気持ちだ。


 俺は2025年12月7日に死亡し、2026年3月2日に再生した。俺は死んで生まれ変わった気持ちで生きてみようかなと思っている。そういう意味でこのエッセイのタイトルを「Reborn」にした。また、Rebornは俺がこの世で最も好きなバンドであるsyrup16gの代表曲の名前でもある。今、Rebornを聴きながらこの文を書いている。


 ちなみに俺は精神科に入院している間、どの患者にも心を開かず、誰とも会話せず、ずっと1人で過ごしていた。友好的に話しかけられても冷たくあしらった。


 今回で精神科には5度目の入院となったが、実は精神科の入院患者は俺のように「人間嫌い」な人はほとんど居ない。精神科病棟の中でも俺はマイノリティだった。


 俺は精神科と整形科の2つがある病院に入院していた。ひざのリハビリのためだ。偶然、俺と同じ境遇の34歳の男性患者がいた。彼も飛び降り自殺を図って入院してリハビリしていた。だから俺と彼は毎日同じ時間に一緒にリハビリ室に向かっていた。


 入院中はとにかく退屈だった。俺は読書をする気力も無くて、文章をノートに書く気力も無くて、4人部屋のベッドで目を閉じて横になっているか、デイルームでつまらないテレビを眺めているだけだった。


 入院中、最もしんどかったのは3か月ずっと音楽が聴けなかった事だ。今まで俺が入院してきた病院では音楽プレーヤーやイヤホンの持ち込みが許可されていたので1日中音楽が聴けたのだ。だが今回の病院はイヤホンの持ち込みが禁止されていた。俺は音楽が大好きでアパートにいるときは大抵イヤホンをして邦ロックを聴いている。音楽・酒・たばこの3点セットが俺の生きがいである。入院中はその3つ全てが奪われていた。


 ちなみに俺は退院して速攻で喫煙と飲酒をしたが、入院中には「たばこ吸いてえ」とか「酒が飲みてえ」という欲求は一切湧かなかった。病院のように強制的に禁酒・禁煙させられる閉鎖空間では、そもそもそういう欲が湧かない。


 あと、俺は入院中、「本質的に人間嫌い」なのである、という事を実感した。俺の精神がガキなだけかもしれないが、俺は誰にも心を開かなかった。精神科でわざわざ他人と喋る必要性を感じなかった。


 そういう意味では、高校時代を思い出した。教室の中の誰とも仲良くなろうとしなかった高校時代だった。野球部を辞めてから不登校になってネットに依存した。不思議な事にネット上には俺と同じような仲間が沢山いたからだ。


 俺はネット上では素の自分を出してるから、ネットがきっかけで友達が出来たりするけど、リアルの世界で友達を作るのは俺には不可能だ。


 俺は社会不適合者そのものであり、唯一の職歴である車関係の工場の職場でも孤立していた。遊びに誘われても二つ返事で断った。集団の中に属すること自体がそもそも苦痛で仕方がない。職場で唯一俺に優しくしてくれたのは、金髪のヤンキーの先輩だった。


 俺は2026年で30歳になってしまう。俺の20代を総括すると、とにかく酒に溺れて病みっぱなしだった気がする。でも悪い事だけではなく、良い事もあった。だけど俺が年齢相応の大人になれたかというと、全く大人になれなかった。今でも10代の思春期みたいな気持ちで生きている。誰か、ライ麦畑で俺を捕まえてくれ。


 今年で30歳……(絶望)


 今後、どうしようかなと考えている。先行きは見えない。運転免許は剝奪された。光の速さで20代は終わろうとしている。俺には不器用な生き方しか出来なかった。俺はA型作業所で働いてみようかなと思う俺がいる。俺は今B型で働いているが、A型作業所なら最低賃金は貰える。


 ちなみに、さっきから缶チューハイを飲み始めた。俺は屑です。


 今、syrup16gの「センチメンタル」を聴いている。人生で1番聴いた曲がセンチメンタルかもしれない。歌詞とメロディーが俺にぶっ刺さる。


 例えネット上の繋がりだとしても、それは確かな繋がりだ。中にはリアルで会った人もいる。


 だからこそ思うが、この文をスマホやパソコンで読んでくれている人には超リアルな血と肉と骨と思考がある。もちろん俺だってそうだ。だから目の前にいるあなたに語り掛ける感覚で俺はこの文を書いている。この文が多少の暇潰しになればいいと思いながら。


 俺は絶望なんて、とっくの昔に通り越した気でいた。だから俺は自分の死を軽く見積もっていた。


 俺は今日も生きている。あなたはどうですか。


 直近の俺の楽しみは、syrup16gのライブとアフターソウルのライブだ。ロックは生で聴くと毎回感動する。


 俺はあの日どうして橋から飛び降りたんだろう。飛び降りた瞬間には希望も絶望も存在しなかった。軽いノリだけだった。


 俺は命の重さを自覚できていなかった。家族にも迷惑や心配をかけた。


 とりあえず生きてみる。


 とりあえず足掻く。


 俺の友達たちが、俺の生存を望んでくれていた。


 俺が生きる理由はそれで充分だ。


 俺は去年死んで、今年生まれた。Reborn。再生。


 1人きりで泣いたり狂ったりする俺。あるいはあなた。


 俺はいつもそばにいる。


 死にたくなるほど辛くなったら、俺に会いに来てくれ。













 終わり




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