後編
それから一年が経過した。
今日は彼女の命日だ。
昨日も彼女は僕に留守電をくれた。
その時、僕はふと気付いた。
留守番電話の音声の中に、ノイズのような音が混じっている事に。
それは荒れ狂う嵐の音であり、踏み砕く砂利の音だった。
今、彼女は荒野にいる。
たぶんそこは、この世の何処にも存在しない荒野なのだろう。
今も彼女はその嵐と砂の中を彷徨っているのだ。
◆
「彼女ともう一度向き合おう」
そう覚悟した僕は、彼女に電話をかける。
彼女からの留守番電話を待つ事なく。
「僕を愛してくれてありがとう」
「君の愛に応えられなかった」
「本当にすまなかった」
電話の向こう側の彼女に向かって、夜を徹して言葉を紡ぐ。
その翌朝。
何故か街を歩く人々の携帯電話から、夜を徹して紡ぎ続けた僕の別れの言葉が漏れ出ていた。
その光景を目の当たりにして、僕は彼女の何かが変化した事を察する。
以来、彼女からの留守電が途絶えたことが、その証であろう。
◆
毎年。
命日になると僕は彼女の携帯番号に電話をかける。
今年になって、ついに今まで延々と聞こえていた砂嵐の音が消えた。
彼女は荒野を抜け出たのだ。
『おかけになった電話は現在お繋ぎすることができません』
その音声ガイダンスに、僕は心の底から安堵する。
別れの留守電 Yukl.ta @kakuyukiyomu
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