後編

それから一年が経過した。

今日は彼女の命日だ。

昨日も彼女は僕に留守電をくれた。


その時、僕はふと気付いた。

留守番電話の音声の中に、ノイズのような音が混じっている事に。


それは荒れ狂う嵐の音であり、踏み砕く砂利の音だった。


今、彼女は荒野にいる。


たぶんそこは、この世の何処にも存在しない荒野なのだろう。

今も彼女はその嵐と砂の中を彷徨っているのだ。



「彼女ともう一度向き合おう」

そう覚悟した僕は、彼女に電話をかける。

彼女からの留守番電話を待つ事なく。


「僕を愛してくれてありがとう」

「君の愛に応えられなかった」

「本当にすまなかった」

電話の向こう側の彼女に向かって、夜を徹して言葉を紡ぐ。


その翌朝。

何故か街を歩く人々の携帯電話から、夜を徹して紡ぎ続けた僕の別れの言葉が漏れ出ていた。

その光景を目の当たりにして、僕は彼女の何かが変化した事を察する。


以来、彼女からの留守電が途絶えたことが、その証であろう。




毎年。

命日になると僕は彼女の携帯番号に電話をかける。


今年になって、ついに今まで延々と聞こえていた砂嵐の音が消えた。


彼女は荒野を抜け出たのだ。



『おかけになった電話は現在お繋ぎすることができません』


その音声ガイダンスに、僕は心の底から安堵する。

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別れの留守電 Yukl.ta @kakuyukiyomu

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