別れの留守電
Yukl.ta
前編
そもそも彼女に恋をしたのが間違いだったのだろうか。
いや。
最初から自分には人を愛する資格など無かったのだろう。
だから僕はその恋心を無視すると決めた。
◆
仮に、己の人生の中で十数年の間、努力を続けてきた事があったしよう。
継続は力也(なり)。
それが仕事でも勉学でも趣味でも鍛錬でも…生き様でもいい。
そんな必死で積み上げたものの隣りに1秒で座るモノがあるという。
それが愛だ。
男のとっての女。
女にとっての男。
恋とは落ちるモノ。
愛とは流れるモノ。
時に濁流となり人生を予測のできない奈落に導く。
その時の僕は、それが幸福だとは思えなかった。
僕に足りなかったモノは、たぶん『覚悟』だった。
だから僕は、彼女を拒絶した。
それ以来。
彼女が僕の元から去った今でも、彼女は僕のその覚悟を試してくる。
毎晩毎晩、僕の留守番電話に彼女のメッセージが吹き込まれるのだ。
それは、屋上から飛び降りた彼女が地面に着くまでの間に僕宛てに残したメッセージだった。
その留守電の音声は次第に生々しい肉声となり、今では通話を聴く逆側の耳元からも愛を囁き始めている。
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