1話5行(PCで)ホラー「空港」(全6話)

ナカメグミ

1話5行(PCで)ホラー「空港」(全6話)

日常生活の断片に、ほんの少しのホラーを(視聴条件・空港を利用する際に、スキマ時間にホラーを楽しみたい方へ)。


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①オールインワン


2人の大柄な外国人男性。海外行きの航空会社の、手荷物検査の列に並ぶ。スキー板、ストック、ブーツ、ウェアが1つに収まる、2メートルほどのオールインワン・スキーバッグ。床に横たえる。列が進むたび、防寒靴の足で蹴って進める。スキーバッグが進むたび、床に赤い跡が伸びる。蹴る。伸びる。蹴る。伸びる。赤。他の人には見えないらしい。スキー場、なのか。2人、なのか。原因は、わからない。


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②制服


ランニングは欠かさない。持久力は基本だ。体幹は大切だ。ジムでトレーニングを欠かさない。最高の状態で制服を着る。インバウンド、国内の家族連れ。平和な旅行客を、犯罪やテロから守るため。国内航空会社の搭乗口に、見知った同期の顔。でっぷり太った腹。同じような体型の妻と子供2人。俺は制服に誇りを持っている。交番勤務とはいえ、あの体型で市民は守れない。許せない。近づいた。腰の警棒を抜いた。


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③土産


土産物売り場のあちこち。長蛇の列だ。焼きたての菓子。メディアで人気の、今が旬の菓子。ある列。破けた絣(かすり)の着物姿の、兄と妹らしききょうだい。血がにじむ手をつなぎ、裸足で並ぶ。兄の手を取る。「あのね、ここ、板チョコ1枚千円以上はするお店。君たち、ここじゃない。おいで」。1階に降りる。おにぎり屋さんの前。「きみたち、ここね」「ありがと」。きょうだい、店の前で、消えていった。


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④占い


アトリウムのオープンスペースでは、いろいろな催し。「占い・10分間無料」の看板。時間がある。戯れに並んだ。「旅はやめた方がいい」。占い師が表情を曇らせた。またまた。ほかの客も大勢、飛行機に乗る。いい加減な占いだ。手続き、手荷物検査を終え、搭乗口に向かう。心臓に鋭い痛みが走った。胸を押さえて倒れ込む。頼む。この近くに医師よ、いてくれ。俺は医師だが、自分の心臓は今、どうにもできない。


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⑤ふり


快速エアポートに乗る。右手にキャリーバッグ。空港に着く。左肩のリュックから、サングラスを取り出す。かける。3階の飲食店街。店員に英語で話す。慣れた店員。英語で席に案内。オーダーも英語。サングラスをTシャツの胸元にかける。食事する。出る。出発口前の椅子に座る。スマホで海外の風景写真を見る。再び快速エアポート。帰宅する。インバウンドごっこ、終了。金属の塊に乗る度胸は、私にはない。


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⑥温泉


家族の見送りに来たついでの空港。せっかくだ。施設を楽しもう。荷物がかさばる。ロッカーを使おう。100円玉4枚。ロッカーを開けた。うつぶせに寝た、真っ白い顔の幼児が、両手をこちらに伸ばしてきた。おいで。抱き上げた。おばさん、これから温泉に入るの。あったかいよ。体、洗ったげるね。白い顔、笑う。ここのロッカー、外気と通じる通路沿いだから、寒かったよね。しっかり、あったまろうね。

(了)

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1話5行(PCで)ホラー「空港」(全6話) ナカメグミ @megu1113

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