味噌汁という日本の食卓には欠かせない一品。
ふんわりと香るおだしの匂い、豆腐やわかめなどの健康的な具材、そして味に深みを与える味噌のコク……こんなに素敵な家庭料理はありません。
しかし本作、タイトルからしてなんというおぞましさ!!!
味噌汁の優しいイメージを微塵も感じさせない、発想力の凄さに圧倒されました。
しかし、タイトルだけではございませんでした。
風変わりな義母の言動に不気味さを感じる冒頭から引き込まれます。
そして半ばで一息つけるような展開になるのですが……物語に終始、翻弄されてしまいます!
ぞわぞわが止まらない短編ホラーの傑作!
是非ともご一読を!!!
話の緩急が素晴らしい作品でした。
これはある家庭に焦点を当てた話です。主人公は義母と暮らしているのですが、彼女はとても穏やかな人で、夫婦の生活にも口を出さないし、主人公は自分は恵まれていると思っていました。
しかし、そんな義母にはひとつだけ不気味なところがありました。
毎朝、日課である散歩から帰ってきたあとの朝食で、彼女は味噌汁を睨み出すのです。
そして今日は大丈夫かそうでないか、口にします。
彼女が言うには、味噌汁に波紋ができているかどうか調べているらしく、もしそれができていたら、その日、だれかが死んでしまうというのです。
そんな馬鹿な話があるか、と思うけど、義母の予知ははずれたことがないらしいです。
主人公はそのことについて夫に訊くと、あれは霊能力じゃないと言い、もっともらしい説明をするが……。
最後まで読んでゾクッとしました。
普段は穏やかな義母だからこそ、不気味な面があることがなおさら怖いです。
穏やかな義母の話→実は彼女には不気味な面がある→夫が義母の霊能力を否定→そしてゾクッとする結末……と話の浮き沈みのさせ方が素晴らしく、物語に引き込まれてしまいました。
サクッと読めますし、おすすめの作品です!
ストーリーの流れがオチに見事に繋がっていて驚かされました。
ホラー×ミステリということでどんな味つけなんだろうと思っていたら、かなり意外な扱い方だったので痺れました。
主人公の「私」は夫と義母と暮らしており、義母のとある不可解な言動に不信感を募らせます。義母は朝食の味噌汁を出される度に味噌汁をじっと見つめ、「近所で死人が出るか否か」を予言するのです。しかもその予言は一度たりとも外れないという。
果たして義母の予言のカラクリとは何なのか。そのカラクリが呼び起こす恐るべき結末とは。
驚愕と共にジワジワと嫌な後味を残す展開はホラー感全開。一方で「伏線が収束する」というタイプのミステリとしての読み味もあって、自分としては非常に好みのお話でした。
オススメです!
日常の安寧と不穏な気配を同じ食卓に並べてみせたこの風景を書こうと思いつく仁木さんのアイデアがいきなり怖い……。
義母の人物造形は温厚さと不気味さが紙一重で同居し、読者は安心と不安の間を往復させられます。
味噌汁の波紋という些細な現象を不吉の兆しへ昇華した着想は古典怪談の作法を踏まえつつ現代的合理解釈を挟み、理と怪の綱引きを成立するのです。
特に終盤、「出ていない」という一言で論理の支柱を外す転調は鮮やかで、静かな恐怖が遅れて効いてきます。
説明過多に陥らず余白を残した筆致も品があり、読後、自分の朝食の味噌汁椀の水面を覗き込みたくなる(私は朝はご飯派なので余計に)余韻が残る秀作であります。
「家庭」という最も現実的で平和な場所であって欲しい所を舞台に据えた点も巧みで、逃げ場のない近距離の恐怖がじわりと沁みます。
義母の台詞運びは簡潔ながら呪文めいており、
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎」
このセリフの余情は古い怪談の結句を思わせて秀逸過ぎました。
静かな文体で、読者の背後にそっと立つ気配を書く稀有な筆力はいつも魅了されます。
読後に日常の椀や湯気が不意に不穏へ変わる感覚こそ、本作最大の功績であり、怪談の本懐を現代に甦らせた一篇と評したいです。
端正にして妖しい、実に見事。静かな名品。
余韻深し。
必読作也!