私を推してくれるのは


 パートナーを喪った母が推しに出会って救われた。

 誰に対しても等しく希望を届けてくれる人気アイドルは、娘の私ですら届かなかった領域にたやすく踏み込んだ。

 母は自分よりも彼のことを大切にする。

 無論――私よりも。



 今の時代は良くも悪くも「家族」の枠組みが変わっている。
 厳重なしきたりに守られた聖域などではなく、ルームシェアする誰かくらいの感覚ですらある。

 昔からアイドルに熱を上げる人はいたし、問題のある家庭はあった。

 だが、情報がシェアされ、個人の生き方が正当化されて以降、姿すら知らない他人が近く、日夜出会う隣人が遠くなった。


 この短編の優れた点は、現実要素のバランスだろう。
 過度に毒を盛らない。けれども危うい感じにはする。

 話の収束も含め、地に足のついた作品だと思った。