魔導都市で展開される物語の厚みは、不思議な読後感によって「もう一度読み返したい」という気持ちになりました。
ふんだんに詰まったミステリー要素によって知的好奇心を刺激され、「なるほど、こういった形の推理モノもありなんだな」とハッとする新鮮さを受けました。
なによりミステリー小説で大切な「読みやすさ」が徹底されており、安心して物語の世界に没入することができます。
まさに「ハマる」感覚を呼び起こされる独特の吸引力があるため、クセになる読者も多いのではないかと個人的に思いました。
推理モノのみならず、異世界モノとしても楽しめる柔軟な構成になってますので、きっと驚くような怪事件体験を味わえるはずです。
このお話は霧の魔導都市を舞台に、「怪異」を論理と共感で解体していく探偵コンビの活躍を描く連作ミステリーです。差別と偏見が渦巻く街で、吸血鬼弁護士事件「私刑執行人」、霊術師密室首吊り事件「首吊る部屋」、まだ誰も死んでいないのに噂だけが先行する「破滅のコイン」など、つぎつぎと連作ミステリーが展開されていきます。いずれの事件も、一見すると怪物や幽霊が犯人に見せかけられていますが、アレクシスの冷徹な推理とミレイアの感情読解によって、「本当の犯人は生身の人間」と明かされます。物語の印象として、「魔法に奇跡はない」「怪物よりも厄介なのは偏見」というテーマが、一つひとつの事件の構造に落とし込まれているような気がします。長編です。じっくり楽しめます。続きはぜひ皆さんの目でお楽しみください。
霧の都、異形の者たち、次々と起こる事件の謎に迫るのは星霧探偵社(せいむいたんていしゃ)の探偵アレクシス・グレイヴン。
彼は、罪を暴くのではない。”歪み”を暴き魔法を論理で解体する。
霧の都・魔導都市ヴァル・ロンドリアには人間だけでなく、亜人や水生魔族などなど異形のものたちがいて、吸血鬼や人狼、悪魔さえも職に就いて働いている。
しかし、やはり人間は彼らに持つ歪な感情を持っていて、その感情が事件を引き起こすきっかけとなることもある。
吸血鬼が犯したと思われる殺人現場を見て、アレクシスは、言う。
「怪物よりも厄介な存在を知っているか? 偏見だ」
アレクシスのセリフは一言一言が冷徹なまでの真実を撃ち抜く弾丸のよう。
シャーロックホームズとスチームパンクの世界が好きな人にはたまらない雰囲気がある。
オススメです🌟
お見事、という他ありません。
月影草の毒、密室の再構築、そして「死後に刺された杭」の意味。
散りばめられたピースが、アレクシスの論理によって一本の線に繋がる様は見事な芸術作品のようでした。
特筆すべきは、犯人であるセラフィナの動機です。
憎しみではなく「守りたかった」という歪んだ愛情が、図らずも悲劇を招く。
その残酷な真実を、ミレイアの共感能力を通して描き出す構成には震えました。
最後にアレクシスがミレイアを「採用」するシーンでの、あの静かな肯定感。
ミステリの構造美とキャラ文芸としての熱量が、これ以上ないバランスで同居しています。
次の事件への引きも完璧で、この筆力にはただ圧倒されるばかりです 👏✨