第10話 そして…
社内はいつも通り賑やかだったが、俺の胸中は嵐のようだった。可憐の言葉が頭に響く。
「みんなの気持ちを聞いてから、私を選んでほしい」
彼女の優しさが、俺を前へ押す。
スマホの未読LINEは増え続け、清香、小野坂、瀬川先輩、葵からのメッセージが並ぶ。
俺は深呼吸して、みんなにグループLINEを送った。
「今日の昼休み、休憩室で話そう」
返事は即座に「OK!」の連発。
社内の空気が、今日だけ特別に重く感じる。
昼休み、休憩室に集まった。
清香がコーヒーを淹れ、小野坂がお菓子を広げ、瀬川先輩が静かに座り、葵がスマホをいじりながら待つ。
俺はテーブルを囲んで、みんなの顔を見る。彼女たちの視線が優しくて、少し照れくさい。
「みんな、ありがとう。昨夜の件とか、最近のいろいろ……本気だって、わかったよ。俺、風俗通いの過去とか、彼女いない歴とか、恥ずかしいけど、みんなそれを受け止めてくれて嬉しい。でも、俺は可憐を選ぶ。彼女が、俺の心を初めて動かしてくれたんだ」
みんなの表情が少し曇る。
清香が最初に口を開く。
「先輩……私、風俗バレからからかい始めたけど、本当はあの時から好きだったんです。毎週同じ子指名する律儀さ、可愛くて。社内で一番、安心できる人だと思ってたのに……負けちゃったか」
彼女の声が少し震える。
小野坂が目を輝かせて続ける。
「私も! AVの話とかぶっちゃけちゃったけど、先輩の反応見て、もっと知りたくなったんです。天然だって言われるけど、本気ですよ? でも、可憐さんみたいな本気の人がいるなら、仕方ないかなー。でも、友達でいてくださいね!」
瀬川先輩は穏やかに微笑む。
「私も、離婚後、男の人を信じられなかったけど、山本くんは誠実で……出張の夜、実は本気だったの。風俗の話聞いても、変わらない人だって思ったわ。でも、選ばれなかったなら、応援する。仕事のパートナーとして、ずっとそばにいるわよ」
葵が最後、軽く笑って言う。
「お母さん経由で知ったけど、山本さんみたいなギャップある人、タイプだったんですよねー。でも、部長の娘として、社内で頑張るよ。負けたけど、連絡先交換したし、時々遊んでくださいw」
みんなの本気が、胸に染みる。
彼女たちの笑顔、からかい、優しさ。
それが俺をここまで変えてくれた。
いい人止まりの俺が、こんなに愛されてたなんて。ハニトラなんて、ただの勘違いだった。外からノックの音がして、ドアが開く。
可憐が入ってきた。
彼女はみんなを見て、柔らかく頭を下げる。
「みんな、康太さんのこと、ありがとう。私も本気です。でも、みんなの想い、康太さんに伝わってると思います。一緒に、康太さんを支えましょう?」
休憩室が温かな笑いに包まれる。
みんなが頷き、俺は可憐の手を握る。
社内の女子たちは「負けないよ!」とジョークを飛ばし、友情が深まるのを感じた。
俺、モテ期来てたのか……。
今なら、素直にそう思える。
◇
数ヶ月後、社内はより明るくなった。
俺と可憐は正式に付き合い、週末はデートを楽しむ。
社内女子たちとは、グループでランチしたり、飲みに行ったり。清香のからかい、小野坂の天然、瀬川先輩のアドバイス、葵の軽快なトーク。
それが俺の日常を彩る。
可憐と手をつないで歩く道で、俺は思う。
いい人だけど好きになれない、なんて言葉はもう過去だ。
みんなのおかげで、俺は変われた。
これからも、みんなと一緒に。
『いい人だけど好きになれない』と言われ続ける【第3希望な俺】を会社の可愛い女の子達が本気で落としにきてることをまだ気づいていない 田中又雄 @tanakamatao01
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