第2話 先輩と出張
「ねぇ、山本くん。話聞いてる?」
「え?…あっ…すみません…何の話でしたっけ…?」
「だから、今日は私と出張でしょ?行きと帰りどっち運転するかって話だけど…大丈夫?」
「あ、大丈夫です…。じゃあ、帰りがいいです」
「…そう。しっかりしてね」
「…はい」
瀬川先輩は俺の2年先輩であり、超美人である。
入社してから色々とお世話になり、この人事部に異動させてもらったのも瀬川さんのおかげだった。
そして、去年の初めに同じく2年先輩の近藤さんと結婚した。
近藤さんは営業部の人で、イケメンで気配りもできて、明るい人だったが…どうやら近藤さんの浮気が発覚したらしく約半年で離婚。
曰く、もう結婚とかは懲り懲りだと言っていた。
入社してすぐに瀬川さんに片想いしていた頃が懐かしい。
瀬川さんに認められたい、褒められたい一心で働いていたおかげで、今の位置に居られるのだから、恋は叶わなかったがそれでもあの感情は自分にとって大事な思い出であった。
そうして、午前の仕事を終えると、そのまま瀬川先輩と共に出張に行くことに。
「忘れ物はない?」
「はい、大丈夫です!…多分」
「じゃあ、出発前に確認しようか」
「あっ…USB忘れました…」
「取ってきなさい」
「…はい」
それから急いで取りに行く。
やばいな…最近、こういうミス多いんだよな…。
もしかして…歳なのか…。
そうして、2人で車で約3時間のドライブをしていたのだが…何やら話をしている最中にうとうとしてきて…いつの間にか寝てしまうのであった。
次に目を覚ますと…目的地まで残り数分であった。
「…はっ!!す、すみません…!!寝てしまって…!!」
「別に寝るのは全然いいんだけど…どういう夢を見ていたのかな?」
「え!?…どんなのだったかな…」
「『そこ、きもちぃよぉ…』とか、『舐めるのうますぎ…』とか、そんな寝言を言っていたけど?」
「え!?//…すみません…//」
「床上手な彼女なのね」
「いや…!!彼女はいなくて…」
「…もしかして、彼女じゃない子としてるの?それはあんまり感心しないわね」
「ち、違くてっ…!そういうお店で…」
「あぁ、そういうこと…。男の子だもんね」
やばい…色々とやばい…。
寝起きすぎてあまりにも正直に答えすぎた。
それから少しの気まずい空気が流れ、目的の大学に到着すると、キャリアセンターに行き、色々話をしたり、大学の教授にお話を伺ったり、いつものように人事の仕事をしていた。
そうして、夜7時くらいに仕事を切り上げる。
「さて、とりあえずホテルのチェックインだけ済ませて、久しぶりに飲みにでも行かない?」と言われた。
「あ、はい!是非!」
先輩と飲めるなんて、やったー!とか思いながら、ホテルに着いて、チェックインをしようとしたのだが…。
「…え?一つしか部屋をとってない…?」
「はい、すみませんが予約は一部屋のみになってまして…」
ちなみに部屋の予約は確か先輩がやってくれたのだが…。
「…そうですか」
先輩がこんなミスするなんて珍しいなと思いながら、「あー、俺は適当に近くのホテル取るんで大丈夫ですよ」と、スマホを取り出すと「いい。お金勿体ないでしょ。今日は2人で泊まりましょう」
「えぇ!?//」
すると、先輩は特に動揺することもなく、普通に手続きを始めた。
いやいやいや!
いくらなんでもこんなエロ漫画的な展開…!
その瞬間、昨日のことが頭をよぎる。
『どうですかねー。先輩は風俗通いって知ったら喜ぶ女子は結構いると思いますけど』
もしかして…これって…!!
ハニトラを仕掛けられてる…!?
最近あまりにも仕事ができないから、ハニトラを仕掛けて俺を別部署に異動させようとしているのか?…!!
間違いない…そういうことか。
だから俺が風俗通いだと知って喜ぶ女子がいる…と。
そっか…知らない間に信用を失っていたんだな。
きっと、お酒に酔わせて…その流れでしちゃって…。
気まずい空気になったことで追い出すみたいな…?
だとすれば…俺のミッションは一つ。
揺るがない信念を持つこと…!
今日はお酒を控えつつ、ホテルに着いたら即寝ること!
そう心に決めて、荷物を置いてから飲みに行くことに。
適当な居酒屋を選び、2人で入ることに。
「2人でお酒とか結構久しぶりだよね」
「ですねー」
それから、いつものように仕事の話をしていたのだが…先輩はいつもより飲むペースが早く、約1時間で出来上がってしまうのであった。
「だいたぁいさぁ〜、うわきとかするぅ〜?わたしみたいなぁ〜つくすおんなぁがいるのにぃ〜。あいてがちょーーーっとわかいこだと、すーぐはなのしたぁのばしてさぁ…!」と、別れた元旦那の愚痴が始まった。
「浮気…は…よく分からないですけど…」
「やまもとぉくぅんはしたことあるのぉ…?」
「いや…彼女いたことないですし…」
「あははwうっそーだぁー!w」と、笑われた。
ガチなんだけどなぁ…。
「でもぉ〜、えっちなおみせにはいっぱいいってるんだぁー!やまもとくぅんのえっちぃーあはははww」と、見たことのない先輩の姿が露わになった。
それから、少ししてお店を出る頃には先輩は千鳥足になっていた。
「ちょっ…!大丈夫ですか!肩貸しますよ」
「おっぱぃおもぃ〜…」とか言い始めるくらいに酔ってしまった。
それから、ホテルに戻ると「しゃわーあびるー!のぞいてもいいからねーーー」とか言いながら、シャワーに行ってしまった。
…一応、ベッドが二つあるけど…まさかこんなことになるなんて。
とりあえず、お酒は控えたのは多分正解だった。
それから、先輩が上がってきたのだが…めちゃくちゃ大きい胸が溢れんばかりの様相であった。
「ふひー」といいながらベッドにダイブする先輩。
「大丈夫ですか?」
「んー?えへへー抱っこしてぇ…」とか言ってくる先輩。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/822139845891408575
「抱っこしませんよ」
交代して、俺がシャワーを浴びていると、扉が突然開き、シャワーカーテンが勢いよく開く。
「あははwちんちんみせてー!」
「ちょっ!?//」
「ちっちゃーいwwあははww」と、そのまま扉を閉めて出て行った。
…今日の先輩…本当におかしい気がするんだが…。
そもそも泥酔した先輩を見たことがなかったからあれだけど…。
てか…ちっちゃい…。と、一気に凹むのであった。
それから、シャワーを上がり、髪の毛を乾かし、歯を磨いてから浴室を出ると、先輩は気持ちよさそうに大の字で寝ていた。
…めちゃくちゃ繊細な人だと思ってたけど…大胆な人だったんだな。
そう思いながら、溢れ出しそうな胸をチラ見しながら、布団をかけて、別のベッドで眠るのであった。
◇
「…んんぅ…あたまいたい…」
目を覚ますと見慣れない天井があった。
あぁ…そうだ…昨日はホテルに泊まったんだ。
ていうか…居酒屋に行ってからの記憶が…。と、寝返りを打つと反対側のベッドに山本くんが寝ていた。
「!?//」と、裸そうなローブを急いで直す。
そ、そうだ!
ホテル一部屋しか取らなかったから…!
お酒に酔わせて色々と山本くんの話を聞こうと思ってたのに…!
ていうか…まさか…しちゃった…?
と、焦ってゴミ箱をチェックする。
ゴムはない…し、あれの匂いもしない…。
というか、別々のベッドに寝てる上に、私もちゃんとローブ着てるし…。
…えっちなお店に行ってるって噂は本当みたいだったけど…やっぱ山本くんは山本くんなんだな…。
はぁ…山本くんと結婚できたらな…。と、そんなことを思う私であった。
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