『いい人だけど好きになれない』と言われ続ける【第3希望な俺】を会社の可愛い女の子達が本気で落としにきてることをまだ気づいていない
田中又雄
第1話 風俗通いのモテない男
高校時代のあの瞬間が、時折夢の中で蘇る。あれは3年生の春、桜が満開の校庭だった。
俺、山本康太は、クラスメートのあかりに告白した。
彼女は明るくて、いつも周りを笑わせるタイプで、俺ら自然と友達になっていた。
放課後、一緒に帰る道中で何気なく話すうちに、俺の気持ちが抑えきれなくなった。
「俺、あかりのこと好きなんだ。付き合ってくれないか?」
彼女は少し驚いた顔をして、でもすぐに柔らかい笑みを浮かべた。
あの笑顔が今でも鮮明に思い出せる。
「…ごめん、康太のこと、友達としか見れないんだよね。いい人だと思うけど、そういう目では見れないんだ」
彼女はそう言って、頭を下げた。
俺は無理に笑って、「だよね。ごめん。これからも友達でいようぜ」と返したけど、心の中はぐちゃぐちゃだった。
いつもそうだった。
女子とは普通に仲良くなれるのに、告白すれば決まってこのパターン。
小学、中学、高校と、友達の輪は広がるけど、恋愛の扉はいつも固く閉ざされていた。
いい人だけど、みたいな言葉が、俺の胸に積み重なっていく。
彼女たちから見れば、俺は安全牌みたいな存在だったんだろう。
面白くなくて、特別な魅力がない。
キープくらいにはいいけど、第一希望にはならない。
いつも、第3希望くらいの男。
◇
そんな夢から、俺はゆっくり目を覚ました。ベッドの上で天井を見つめ、ため息をつく。
28歳の今、俺はあの頃の自分と大して変わっていなかった。
ダメダメな高校から必死に勉強して、そこそこの大学に入り、頑張って今では大企業と呼ばれる会社に就職した。
5年目で、人事部に異動してからは、仕事が安定してきた。
給料も悪くない。
年収は550万で休みもしっかり取れるし、残業はあんまりない。
そのおかげでそれなりにいいマンションに一人で住んでいる。
1LDKの広さで、家賃は10万弱。
キッチンはカウンター式で、ベッドルームはゆったり。
朝の光が差し込むリビングで、俺は毎朝コーヒーを淹れて一息つくのが習慣だ。
時計を見ると、7時半。
いつも通り、シャワーを浴びて、簡単な朝食を取る。
トーストに卵とベーコン、ヨーグルト。
鏡の前で髪を整え、スーツに着替える。
俺の容姿は、すべてが中の中くらい。
身長173センチ、体重62キロ。
顔は整ってるわけでもないけど、ブス…ではないと思ってる。
昔から、異性の友達は多かったけど、彼女ができたことは一度もなかった。
もう恋愛は諦めて、今では仕事に集中してる。
プライベートは、せいぜい本を読んだり、散歩したり。
それと、最近の趣味は……風俗だった。
生まれてこの方、彼女がいなかった俺は、ついハマってしまった。
週に一回、とある店でいつも同じ女の子を指名して…半年が経過していた。
別に本気で恋をしているとかではない…と思う。
けど、お金を払い続ける限りは裏切らないこの関係が俺には心地が良かった。
多分…会社の人にバレてない…と思う。
この日もマンションを出て、地下鉄に乗る。通勤ラッシュの混雑を避けるために、少し早めに出るようにしてる。
会社に着くと、いつものルーチン。
人事部は女性が多い。
社内でもレベルの高い子たちが揃ってる。
佐藤部長は30代の美人でしっかりしていて、部下の女子たちも可愛い子ばかり。
俺は元々営業だったけど、異動してからここで採用や研修を担当してる。
今はデスクワーク中心で、資料作成や面接の準備。
今日も、午前中は新卒の応募書類をチェック。
隣の席の女子が資料を渡す時に、ふと体が触れる。
柔らかい感触に、ドキッとするけど、理性で抑える。
会議室で上司と打ち合わせしてる時、彼女のうなじが綺麗に見えて、視線を逸らす。
休憩中にエレベーターで後輩とすれ違うと、胸元が少し開いてチラリ。
こんな瞬間が日常茶飯事で、俺は必死に平静を装っていた。
そのせいで…多分いろいろ溜まっているのだろう。
昼休み、休憩室で弁当を広げる。
いつものように一人で食べ始めると、後輩が向かい座ってきた。
胡桃咲清香。
俺の二つ下の26歳。
仕事がめちゃくちゃできる優秀な女の子。
それと…胸が大きい。
会社でも人気No.3くらいの子だ。
最近、直属の部下になって、結構仲良くなった。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/822139845860925666
「先輩ー、失礼しますね」と彼女は笑顔で座る。
「まだいいって言ってないぞ」と返す。
「え?ダメなんですか?」と彼女が目を丸くする。
「いやいいけど」
「いいんじゃないですかー」と、いつものように雑談を交わす。
それから思い出したかのやうに「あっ」と言い始める。
「ん?何?」
「そうそう…先輩、『巨乳王国』ってお店知ってます?」と、突然言われて、俺は思わずむせた。
「ごほっ!!…な、何言ってんだ!」と慌てる。
「いや、この前先輩がそのお店に入るところを見ちゃったんですよ」とか言ってくる。
「人違い…だろ…」
俺が否定するも「いや、出てくるところもしっかり写真で撮ったので」と、返してくる。
「おまっ、1時間半も外で待機してたのかよ!」と俺が驚くと「嘘ですよ。てかそれ、自白ってことでいいですか?いつも90分コースでお楽しみなんですねー。先輩、こういうお店にはいかないと思ってたんですけどねー。残念ですね」と、からかってくる。
後輩の女の子に風俗通いがバレた……。
死にたい。
「…別にいいだろ」と仕方なく開き直る。
「いやーん、妄想の中で私も犯されまくってるんですかー?ってか、彼女さん悲しまないんですか?」
「彼女とかないないし」
「へー。いつからいないんですか?」
「…一度もねーよ」
すると、更に目を丸くする。
「…え?彼女できたことないんですか?」
「なんだよ、悪いかよ」
「へー…意外ですね。なんか女の子の扱い上手いっていうか、そういう感じだと思ってたんで。あれは風俗で得たテクニックだったんですね」
「言い方…。いつも…いい人止まりだからな。もう…恋愛は諦めたんだよ」
「でも、性欲は止まらないと…ふーん」
すると、彼女はスマホで巨乳王国のホームページを見せてくる。
「どの子とした事あるんですか?もしかして、全員としたことあるとか?」
「ねーよ!…1人の女の子としか…」
「…え?…それ本気で言ってます?もしかして、風俗嬢の女の子を落とそうとしてるんですか?いや…ちょっとそれは…」
「そういうのじゃないって!…新しくするよりいろいろ好みが分かってくれて…見た目も好みの人とできたら…それでいいだろ」
「…ふーん」
「この話はいいだろ!てか、誰にも言うなよ」
「どうですかねー。先輩は風俗通いって知ったら喜ぶ女子は結構いると思いますけど」
「え?…それって…」と、俺が聞き返すと「あ、私戻るので」と、そのまま去っていった。
休憩室に一人残され、俺は弁当を眺めながらぼんやりするのだった。
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