広大で美しい一方、底知れぬ闇がひそんでおり、異界への入口――いいえ、異界そのものともいえる海。
本作に登場する海坊主をはじめ、古今東西海には船幽霊や七人ミサキ、シーサーペントやクラーケンなど、さまざまな妖怪や怪物が棲むといわれていますが、それも当然のことでしょう。絶滅したといわれている巨大ザメ、メガロドンだってひょっとしたら――。
主人公は、北の洲へと渡るため、海坊主の親玉のような妖怪「溟僧正」を撃つという舟に乗りこみます。
そこで彼が遭遇する地獄絵図とは、秘めたる過去とは――。
海の恐怖と怪異を、潮の臭いが漂ってきそうなほど、舟の揺れが感じられそうなほど生々しく描きながらも、作者様らしい妖しい美しさにも彩られている暗黒幻想譚。
衝撃的ながら「これしかない!」と思わせてくれるラストも見事です。
お気に召したら、同じく海をモチーフにした和風ファンタジー「螭が月を呑む話」もぜひどうぞ。