第4話 そして…
学校での日々が、なんだか変わってきた。
あの帰り道での誤解が解けてから、恭平に話しかけるのが自然になった。
休み時間に彼の席に行って、軽く雑談したり、昼休みに一緒に弁当を食べたりする。
クラスメイトたちの視線を感じるけど、気にしない。
むしろ、ちょっと嬉しい。
でも、恭平の自己評価の低さが、時々イラッとこともあったけど、それは私のせいでもあった。
もっと自信持てばいいのにと、モヤモヤすることもあった。
昨日も、美琴と笑い合ってる姿を見て、胸がざわついた。
あの子は昔の私みたいだから。
恭平の隣の席で、メモを貸し借りしたり、部活の話をしたり。
自然と親しげだ。
なんでそんなに仲いいの?
私の方が、ずっと恭平のこと知ってるのに。
そんな中、クラスで噂が広がり始めた。
「神崎さんと平岡、なんか仲いいよね」
「幼馴染だって? 意外だわ」
みたいな声が聞こえてくる。
一軍の連中も、それに気づいたみたい。
特に、佐藤大吾。あのコンビニで恭平を馬鹿にした奴。
放課後、廊下で私に近づいてきて、にやにやしながら話しかけた。
「よお、神崎。週末、空いてる? みんなでカラオケ行かない? 俺たちと一緒なら、絶対楽しいよ」
誘い方があからさまだった。
断ろうとしたけど、佐藤はさらに続ける。
「平岡みたいな地味な奴とつるんでるより、俺たちみたいな方が似合うだろ」
その言葉に、カチンときた。
恭平を馬鹿にするなんて、許せない。
睨みつけて、きっぱり断った。
「ごめん、興味ない。恭平のこと、悪く言う人とは関わりたくないから」
佐藤は肩をすくめて去っていったけど、心の中で嫉妬みたいなものが渦巻いた。
いや、嫉妬? 誰に対して? 恭平が美琴と親しげに話す姿をまた見た時、それが爆発した。
休み時間、美琴が恭平の肩を叩いて笑ってる。
あれを見て、胸が苦しくなった。
なんで? 私の方が、ずっと恭平のこと……好きだったのに。
リベンジのつもりが、いつの間にか本気になってた。
放課後、我慢できなくて恭平を屋上に呼び出した。
夕陽が沈む中、息を切らして言う。
「恭平、私の方がずっと好きだったのに! なんで美琴とあんなに仲いいのよ! 私を煽るだけ煽っておいて、他の子と……!」
言葉が勝手に出て、顔が熱くなった。
告白みたいになってしまった。
涙がにじんで、視界がぼやける。
◇
穂波との関係が、少しずつ深まっている気がした。
学校で話しかけられるのが嬉しくて、毎日が楽しい。
でも、クラスで噂になるのは少し気まずい。一軍の佐藤が穂波にアプローチしてるのを見た時、胸がざわついた。
廊下で佐藤が穂波を誘う姿。
俺なんかじゃ、穂波に釣り合わないよな……。自己評価の低さが、また顔を出した。
佐藤みたいな目立つ奴の方が、似合うのかもしれない。
そんな時、美琴が休み時間に声をかけてきた。陸上部の練習着姿で、いつもの明るい笑顔。
汗を拭きながら、俺の席に寄ってくる。
「恭平、最近神崎さんと仲いいね。でも、もっと自信持てよ。あの子、恭平のこと本気で気にしてるみたいだぞ。佐藤みたいな奴に負けんなよ」
励ましの言葉に、少し勇気が出た。
美琴とは友達だけど、穂波のことを話すと、なんだか複雑な表情をする。
彼女の陸上部の話をして、俺をからかう。
「私だって、恭平の隣の席で毎日話してるけど、嫉妬されちゃうかな?」
軽く笑って返すけど、心の中で穂波の顔が浮かぶ。
放課後、穂波から屋上に呼び出された。
行ってみると、彼女は少し怒った顔で立っていた。夕風が髪を揺らす。
「恭平、私の方がずっと好きだったのに! なんで美琴とあんなに仲いいのよ! 私を煽るだけ煽っておいて、他の子と……!」
突然の言葉に、俺は固まった。
好き? 穂波が俺を?
動揺しつつ、彼女の目を見つめた。
夕陽の光が、穂波の頰を赤く染める。
涙が一筋、流れ落ちた。
「穂波……俺も、ずっと好きだった。今も。子供の頃から、変わらないよ。美琴はただの友達だ」
言葉が出た瞬間、穂波の目が潤んだ。
彼女が近づいてきて、そっと唇が触れた。
キス。短いけど、温かくて、心が震えた。
屋上の手すりに寄りかかり、互いの息づかいを感じる。
嫉妬の炎が、二人を繋ぐ絆に変わった瞬間だった。
佐藤の影や美琴の存在が、遠くに感じられた。
街並みが夕焼けに染まる中、俺たちはようやく本当のスタートを切った。
バイトの帰り道で、この温もりを思い出すだろう。
青春の甘酸っぱさが、胸いっぱいに広がった。
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