俺が昔振ったらしい幼馴染がめちゃくちゃ可愛くなってリベンジかましてきたが、そもそも振った覚えがないのだが

田中又雄

第1話 帰宅したら可愛くなった幼馴染がいた

 俺の名前は平岡恭平。


 現在は高校2年生になる直前、つまり1年の3月の春休み期間であった。


 昔からこれといった取り柄もなく、平凡な日々を送っていた。


 幼い頃は近所に住む幼馴染の神崎穂波とよく遊んでいた。


 その子はいつもボーイッシュで、男の子みたいに活発だった。


 木登りや虫取り、時には喧嘩まで一緒にやって、毎日が楽しかったのを覚えている。


 でも、小学校高学年頃に彼女の家族が引っ越してしまい、それ以来連絡を取ることもなくなった。


 俺はそれで少し寂しかったけど、時間が経つにつれて自然と忘れていった。


 中学時代は部活にも入らず、友達とゲームをしたり本を読んだりするくらいの地味な生活だった。


 高校に入ってからも変わらず、部活はせずコンビニでバイトを始めた。


 高1の初めからやっていて、もう一年近くになる。


 シフトは週三回くらいで、レジ打ちや品出しなどをしていた。


 時給はそれほど高くないけど、貯めたお金でマンガを買ったり、たまに友達と出掛けたりするのが楽しみだ。

将来の夢とかは特にない。


 ただ、毎日を無難に過ごせればそれでいいと思っている。



 ◇


 そんな春休みのこと。

午後から友達と街へ遊びに出ていた。


 映画を見て、ファストフードを食べて、適当にぶらぶらしてから夕方近くに帰宅した。


 家は普通の一軒家でこの時間なら母さんはいるかな。


 そうして、玄関の鍵を開けて中に入ると、リビングから話し声が聞こえてきた。

母親の声と、もう一つの聞き覚えのない女の子の声。


「ただいま」


 声をかけながらリビングのドアを開けると、そこにいたのは母親と、見知らぬ女の子だった。


 いや、見知らぬというより、どこかで見たことがあるような……。


 その子はソファに座っていて、長い髪をサラリと流し、大きな目が印象的な、美しい顔立ちをしていた。


 服装はシンプルなワンピースで、全体的に洗練された雰囲気。

まるで雑誌から飛び出してきたような可愛さだ。

母親が俺を見て笑顔になった。


「恭平、おかえり。この子、神崎穂波ちゃんよ。覚えてる?」


 穂波……? あの穂波? 俺は一瞬固まった。

昔の彼女のイメージは短髪で元気いっぱいの男の子っぽい子だったのに、今のこの子は全く別人だ。


 いや、よく見ると目元や笑顔の癖が似ている。

間違いない、あの穂波だ。


「え、穂波? 久しぶり……」


 俺がそう言うと、穂波は立ち上がってこちらに近づいてきた。

彼女の表情は少し得意げで、俺を上から下までじっくり観察する。

それから少し馬鹿にするような笑みを浮かべてきた。


「久しぶり」

「…うん…久しぶり」


 それから少し談笑したのちに、「ね、久々に恭平くんの部屋見たいなー」と言われた。


 言われた通り2人で部屋に行き、扉を閉めた瞬間、こちらを見下すような目になる。


「どう? 私、めちゃくちゃ可愛くなったでしょ。あなたにフラれてから、めちゃくちゃ努力してこんなに可愛くなったんだから。あなたは昔と全く変わってないね。ざまあw今更私に告白しても、もう全然釣り合わないんだからw」と、突然そんなことを言われた。


 彼女の言葉に、俺はぽかんとした。

俺が振った?

残念ながらそんな記憶はない。


「いや、俺、振った覚えとかないけど」


 俺が素直に言うと、穂波の目が少し見開かれた。


「は? 私がバレンタインにあなたの靴箱にチョコ入れたのに、無視したくせに」


 チョコ? そんなの入ってなかった。

少なくとも、俺の記憶にはない。


 小学校の頃のバレンタインにそんな思い出はない。


「……チョコ? そんなの入ってなかったよ。というか、振るとかないと思うよ。だって俺、穂波のこと好きだったから」


 今度は穂波が固まった。

彼女の頰が少し赤くなったように見えた。


「……え?」


 確かに昔、穂波のことが好きだった。

引っ越す前まで、ずっと一緒にいたくて、でも子供心に言えなかっただけだ。


「でもそうだな。こんなに可愛くなったら、俺なんかとはもう釣り合わないよな」


 部屋に少しの沈黙が流れた。


「…ごめん。今日は…帰る」


 どうやら何か勘違いしていたようだったが、まぁ昔のこと。

もう今は関係ない…はずだった。

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