学生時代に彼女を寝取った親友を俺は許さない。〜10年かけてあいつを陥れる特大プロジェクト〜

αβーアルファベーター

第1話 友情という名の仮面

◇◆◇


「悪いな、亮介。麻衣は俺を選んだんだ。

 お前みたいな地味な奴には、彼女は勿体なかったんだよ」


10年前。大学の卒業式を目前に控えたあの日。

俺、佐藤亮介さとうりょうすけの人生は、

親友だと思っていた高橋勇樹たかはしゆうきによって粉々に砕かれた。


勇樹は文武両道で華があり、誰からも好かれる男だった。

対する俺は、目立たないガリ勉タイプ。

それでも俺たちは、中学からの腐れ縁で「最高の親友」だと信じていた。


俺が3年付き合い、結婚まで考えていた麻衣まいを彼に寝取られるまでは。


「亮介、怒るなよ。これは『自由競争』だ。麻衣だって、将来性のないお前より、大手デベロッパーに内定が決まった俺の方が幸せになれるって確信したんだからさ」


勇樹は勝ち誇った顔で、俺の肩を叩いた。

その隣で、

麻衣は申し訳なさそうな顔をしながらも、勇樹の腕をぎゅっと掴んでいた。


その瞬間、俺の中で何かが「プツン」と切れた。


悲しみではなかった。

それは、真っ黒で、冷たくて、底の見えない「憎悪」という名のエネルギーだった。


「……そうか。おめでとう、勇樹。麻衣」


俺は、精一杯の作り笑いを浮かべた。

怒鳴り散らし、殴りかかれば、その場はスッキリしたかもしれない。

だが、それでは足りない。


そんな一時的な感情の発散で、

俺の3年間と、踏みにじられた尊厳が報われるはずがない。


(10年だ。10年かけて、お前が手に入れる全てを、最も残酷な形で奪い取ってやる)



◇◆◇


卒業後、勇樹は予定通り超大手の「帝都不動産」に入社した。


一方で俺は、誰もが知る大企業の内定を全て辞退し、

あえて「経営再生」と「債務整理」を専門とする、

泥臭くも鋭利なコンサルティングファームに身を投じた。


目的はただ一つ。

「人を社会的に、経済的に、そして精神的に合法的に殺す方法」を学ぶためだ。


最初の3年間、俺は死ぬ気で働いた。

睡眠時間は毎日3時間。企業の弱点を見つけ出し、内部から食い破り、再編する。

その過程で、法律、財務、心理学、そして人間の醜い裏側を全て吸収した。


5年が経つ頃、俺は「業界の掃除屋」として名を馳せていた。

名前を変え、実績を積み、顔の印象すら変えるために眼鏡を外し、

体を鍛え上げ、隙のないエリートの仮面を作り上げた。


その間も、勇樹の動向は常にチェックしていた。

SNS、業界の噂、共通の知人。

彼は麻衣と結婚し、順調に出世街道を歩んでいるようだった。

時折投稿される「幸せな家族」の写真。高級タワーマンション。高級車。


「いいぞ、勇樹。もっと高く登れ。

 もっとたくさんの『守るべきもの』を積み上げろ」


高く登れば登るほど、地面に叩きつけられた時の衝撃は大きくなる。

10年という月日は、俺にとって復讐の準備期間であり、

彼にとっての「執行猶予」に過ぎなかった。



◇◆◇


そして、10年目の春。

俺はついに、彼が勤める帝都不動産の「外部顧問」というポジションを手に入れた。

もちろん、本名は伏せ、実績十分な若手コンサルタント「佐川陵さがわりょう」として。


オフィスビルのエントランスで、俺はネクタイを締め直す。

鏡に映る自分は、10年前のあの弱々しい亮介ではない。


「さあ、始めようか。特大のプロジェクトを」


俺は不敵な笑みを浮かべ、彼が待つ会議室へと向かった。

そこには、少し腹の出た、相変わらず自信満々な顔をした勇樹が座っているはずだ。

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