応仁の乱からおよそ150年続いた日本の戦国時代。その最後の戦いとなったのが、慶長20年(1615年)の大坂夏の陣であり、そこには数々のドラマが生まれます。
そして本作も、二人の男の友情を軸に、関ヶ原の戦い前夜から大坂の陣の一幕――千姫奪還事件までを描き出す歴史ドラマです。
実はこの作品、同じ題材の短編(『二蓋笠(にがいがさ) ~柳生宗矩、千姫事件を捌(さば)く~』、https://kakuyomu.jp/works/822139839339730680)がすでに公開されておりますが、実際は本作の方が先に完成しており、上記は本作の短編バージョンという位置づけです。(ちなみに上記短編は、カクコン11短編部門中間選考を通過しています)
本作では、短編では盛り込めなかった要素――冒頭の按針の「徳」談義、直盛と宗矩の友情、直盛のキリシタン入信――が丁寧に描かれ、それらがラストに向けて綺麗に収束し、「千姫事件」の新しい解釈を読者に示すという展開になっています。
短編をすでに読まれた方も、是非こちらの「本家」をお読みください。未読の方も、本作と短編を両方お読みになれば、その違いをお楽しみいただけるかと思います。
最後に、両方拝読した私からひと言。やっぱり秀忠は許せん!
千姫事件を扱った、歴史ミステリーともいえる本作。
板崎直盛が主人公であり彼の示した亡き友への友情、柳生宗矩との言葉を受け入れ自害に果てる様も、燦然と燃え盛る「徳」なのでしょう。
ですが、柳生宗矩。
彼が直盛の死後に示した行いこそ、私には「徳」の形だと感じた。
「宗矩は変わらず二蓋笠を使いつづけた」
最高権力者の意向に抗い続ける。その理由も共感も、誰にも求められない。
不撓不屈たるを淡々と「続ける」
その在り様こそが「徳」であると。
未読の方には、是非ふたりの「徳」の示し方を体験して頂きたい。
付記すると、宗矩も直盛も、若き日はむしろ欠点の多い人物だったことです。
彼が年月とそれぞれの友誼を経て変化していく様子も、楽しんで頂けると思います。