三すくみの村。
村々は水にまつわる三匹の蟲むしを水神に据えることで均衡を保っていた。
蛇、蛙、蛞蝓。
どれか一つの村が水を独占するようなことがあれば、別の村の水神様からの祟りが起きるという言い伝えがあった。
水争い、日照りや洪水、飢饉や冷夏。人の力ではどうにもならない困りごとが起きたその時は、村娘を一人、水神の花嫁として捧げるという風習が存在する。そんな迷信じみた信仰と儀式が、明治と呼ばれる今の世になっても続いているらしい。
蛇神の花嫁として捧げられる少女、滝乃。
村の因習をぶち壊したい青年、菊一。
神の皮を被った悍ましい存在、ミズチ。
村を守る神様の秘密が暴かれたその時、生贄となった滝乃が選んだ未来とは?
明治時代風の雰囲気のある、ダークな和風ファンタジー。
ちづさまの異類婚姻譚シリーズ最新作。
山蛭、幻神、蛆虫(蝕神)、カラスときて、まさかの蛞蝓! これは読まないわけにはいかない、と拝読させていただきました。
読了後の満足度がやはりすごい。
様々な作品を読ませていただいていますが、作者さまの読ませる力は本当に素晴らしいものがあります。今作の題材は人を選ぶものではありますが、一度ハマったら抜け出せない、そんな魅力に溢れているのです。前作もそうでしたが、人の心をくしゃりと握り潰してくるあの筆力が本当に羨ましく、短編でもそれは変わりません。
そんなちづさまの挑戦的な作品。
この短編に魅せられた読者さま、これを機に全作品制覇しましょう! オススメなのでぜひ✨
美しく重厚な文章も、どこか湿り気のある和風世界も、近代化と伝統の狭間で揺れ動くストーリーも、全てが魅力的な本作。
その中でも特に素敵だと思ったのが、主人公である滝乃という少女でした。
"あなたといると、私はきっと、自分の価値を示せなかった人に、自分の不遇を乗り越えられなかった人に石を投げるようになる"
菊一といればいつかそうなってしまうであろう自分の弱さを疑わず、そしてそのような未来を疎むあたたかさ。
そして、大切だった菊一のことを思い、村に滅亡や復讐を望まない、美しい強さ。
短編ながら、さまざまな側面を見せてくれる滝乃さんがとってもよかったです。
ミズチさんも大好き! 毒々しい見た目と、恐ろしい価値観。纏っている麗しい色気、それでいて、滝乃さんと心中したがるところにはどことなく可愛らしさもあって。
魅力的なキャラクターを描くのはとても難しいことだと思います。私も小説を書くので深くそう思うのですが、ちづさんの作品に出てくるキャラクターはまるで実際に生きているような、繊細な息遣いを感じられてすごく魅力的です。
未読の方はぜひぜひ読んでみてください!🐌
時は明治。水利を分かち合う三つの村があり、それぞれ水にまつわる虫の神様を祀っていた。
三柱の神様のうちの一柱「ミズチ様」に嫁ぐことになった人柱の滝乃。迷信嫌いで、くだらないしきたりは壊してやりたいと思っている新しい考えの持ち主。
そんな滝乃を帝都に連れて行ってくれると言う菊一。ところが、他の社に異変が起こり、ミズチ様の秘密や滝乃の過去が次第に明かされてゆく。水神の花嫁としての責任もある中で、菊一と帝都に行くか、ミズチ様の花嫁として生きていくのか。
滝乃は大きな決断を迫られます。
作者様のヒロイン像は心が透明になるような清らかさがあるのですが、時々びっくりするほど大胆な行動に出たりして、そのギャップがとても素敵です。古風と新しさと両方持っている感じですね。
そして光と闇の間で揺れ動く心。でも、光の世界が全て良いものと言うわけじゃないし、闇の中にも美しさや心地よさがある。どちらを選んでも良いし、どちらが正しいと言うわけでもない。
作者様の作品を読むと、いつも考えさせられます。
あなたはどちらの世界を選びますか?
面白い作品なので、ぜひ読んでみてください!