灰となった世界で問い直される、知識の灯火

全話読ませていただきました。

この物語は、脳と機械が繋がり知識が必要なくなった高度な文明が崩壊したあとの退廃的なポストアポカリプスを舞台にしています。文字が失われ、知識が禁忌とされた世界では、本は「知恵」としてではなく、「燃料」として燃やされていきます。

主人公のサトシは、文字を読む力を持ち、図書館に住みながら密かに禁忌の知識に触れてきた人物です。それを隠して暮らすなかで旅人のセナと出会い、やがてその知識を村のために活かそうとします。

この作品が静かに問いかけてくるのは、「知識とは何か」ということです。知識を万能なものとして讃えるわけでもなく、危険なものとして切り捨てるわけでもありません。ただ、どう使い、どう繋いでいくのかを丁寧に紡がれていきます。

そして問いは、人間と動物の違いとは何か、私たちは知識とどう向き合うべきかというところまで自然に広がっていき、読み終えたときに初めてタイトルの意味がすっと腑に落ちました。

終末世界の静かな空気のなかで、本と火と人の営みがしっかり結びついていて、短編ながら読後に深い余韻を残す作品です。

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