第4話 永遠の銀
あれから、数年が過ぎた。
あの夏休みの記憶は、今も鮮やかだ。
あの部屋の静けさ、ダリアさんの銀髪が灯りに揺れる姿、互いの視線が絡み合う瞬間。
すべてが、俺たちの始まりだった。
俺、神浦樹は今、25歳。
札幌の貿易会社で働いている。
父のコネで入社したけど、今は自分の力でプロジェクトを任されるようになった。
仕事は忙しいけど、充実してる。
ダリア――今は神浦ダリア――は、モスクワの大学を卒業後、日本に移住した。
日本語の通訳兼ライターとして、フリーランスで活躍中。
日本文化の記事を書いたり、アニメのロシア語訳を手伝ったり。
彼女の青い瞳は、今も変わらず輝いている。ただ、少し柔らかくなった。笑顔が増えた。
俺たちは、ホームステイの終わり頃に正式に付き合い始めた。
両親には最初、驚かれたけど、父の取引先という縁もあって、祝福された。
ダリアの父さんも、ビデオ通話で「娘をよろしく」と笑ってくれた。
結婚は3年前。
札幌の小さな教会で、雪が舞う中で挙式した。ダリアの白いドレスは、まるで彼女の銀髪のように純粋で美しかった。
今、俺たちは札幌の郊外に小さな家を構えている。
庭付きの一軒家で、冬になると雪だるまを作って遊ぶ。
夏はバーベキュー。
観光で訪れた場所を、時々家族で巡るのも恒例だ。
子供は二人。
長男の海斗は4歳。
元気いっぱいで、アニメ好き。
ダリアから受け継いだ青い瞳が、俺の黒髪と混じって、不思議な魅力がある。
「パパ、今日はゲーセン行こう!」って、毎週末せがんでくる元気な子。
長女の雪乃は2歳。
まだ言葉がたどたどしいけど、ダリアに似てクールな表情をする。
でも、甘えん坊で、俺の膝の上に座って絵本を読ませるのが好き。
銀色の髪が少し混じったふわふわの頭を撫でるたび、幸せを感じる。
日常は穏やかだった。
朝、俺がコーヒーを淹れる。
ダリアが子供たちの朝食を準備する。
海斗がテーブルでアニメの話をし、雪乃がミルクをこぼす。
家では笑い声が絶えない。
仕事から帰ると、ダリアが迎えてくれる。
「おかえり、樹」
その声は、昔のクールさの中に、温かみが加わった。
夕食は一緒に作ることが多かった。
ロシア料理と日本食のミックス。
ボルシチに寿司を添えたり。
週末は家族で出かける。
小樽の運河を散策したり、円山動物園で動物を見たり。
ダリアは「ここ、初めて来た時のこと覚えてる?」と微笑む。
俺は頷いて、手を握る。
子供たちは無邪気に走り回る。
幸せだ、本当に。
あの夏の出来事は、俺たちを強く結びつけた。
ダリアの「絶対服従」の約束は、今は冗談みたいに笑い話。
でも、あの夜の記憶は、二人だけの秘密。時々、ふとした瞬間に思い出して、互いに視線を交わす。
子供たちが大きくなったら、もっと旅行したい。
ロシアに行って、ダリアの故郷を見せてもらいたい。
海斗と雪乃に、祖父母を紹介したい。
未来は明るい。
俺たちは、家族として、ずっと一緒にいる。
そんな夜。
子供たちが寝静まった頃。
リビングの灯りを落として、俺はソファに座る。
ダリアがキッチンからワイングラスを持って近づいてくる。
銀髪が月光に輝き、青い瞳が俺を捉える。
彼女は俺の隣に座り、グラスを傾ける。
静かな時間。
子供たちの寝息が、遠くから聞こえる。
ダリアはゆっくりと俺に体を寄せ、耳元で囁く。
声は、昔と同じく、少し妖しい響きを帯びて。
「はじめようか」
俺は微笑んで、彼女を抱き寄せる。
永遠の始まりのように。
ホームステイしているロシア美人でシコってるところを本人に見られてしまいました 田中又雄 @tanakamatao01
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。