幼馴染がヤリチンにNTRので復讐したいと告解室で告白したら、シスターさんに逆告白されました

田中又雄

第1話 幼馴染のNTRとシスターさん

 俺の名前は佐藤 悠真。

平凡な高校二年生だ。

俺には、10年片思いしている幼馴染がいる。


 白峰 美咲。

家が隣同士で、小学生の頃からずっと一緒にいた。

夏休みは毎日川で泳いだり、互いの家に泊まりに行ったり。


 美咲の部屋でゲームをして、夜遅くまで笑い合った。

あの頃の彼女はまだ子供っぽくて、俺の背中に飛びついて「悠真、捕まえて!」と騒いでいた。


 でも、年々美咲は変わっていった。

中学生になる頃には、黒髪のストレートがサラサラと輝いて、笑うと目尻が優しく下がる可愛い顔になっていた。


 それに呼応するかのように俺の気持ちも、どんどん重くなっていった。

でも、告白なんてできなかった。


『もし告白したら幼馴染という関係も壊れるかも』って、臆病な言い訳を繰り返すだけだった。


 高校に入って同じ学校になった時も、結局何も言えずにいた。


 美咲はクラスで人気者になって、イケメンからの告白話もよく耳に入ってきた。

そのたびに胸がざわついたけど、結局彼女は誰とも付き合わなかった。


 ……今年の夏休みまでは。



 ◇


 夏休み明け初めての登校。

9月に入ったばかりの教室は、まだ夏の熱気が残っていた。


 窓から差し込む強い日差しが、床を白く照らしている。

そして、夏休みの思い出を語り合うクラスメートの喧騒が混じり合って、教室全体が活気づいていた。


 その中心に、美咲とあの男がいた。


 三園 大河。

学校一のヤリチンで有名な奴だ。

顔は中の上くらい。

整っているというより、笑顔が上手くて目が合うと誰でも「この人いい人かも」と思わせるコミュ力の化け物。


 話術も気遣いも抜群で、これまで何人もの美少女と付き合っては捨て、捨てては付き合ってきた。


 その三園が、今、美咲の腰に手を回して、耳元で何かを囁いている。


 美咲は恥ずかしそうに笑いながらも、身体を彼に預けていた。


 制服のブラウスが少し乱れていて、胸のラインがくっきり浮かんでいる。


 夏休みの間に急に色っぽくなったみたいで、俺の知ってる美咲じゃないみたいだった。


 その光景に目を疑った。


「…は?」


 すると、美咲の友達が「え!?2人付き合ったん!?」とか言い始める。

三園の評判の悪さはみんなが知るところであり、驚きと抵抗感があるように見えた。


 俺も…同じだった。

よりによってなんでそんなやつと付き合ってんだよ。

それなら…俺と…!!


 そのまま自分の席に座る。

三園は俺の隣の席だった。

イチャイチャを終えると、自分の席に座る。

そして、群がる男子達の前でこんなことを言い始めた。


「はーマジでよ、あいつ名器だわー。夏休み中めっちゃヤったわ。てか、後半あいつの方から求めることも多くて、エロい女だわー」とか男子の輪の中で、わざと大きな声で自慢げに言った。


 周りの奴らが「マジかよ」「白峰さんエロ!」と、好奇の目で美咲を見る。


 俺は自分の机に突っ伏して、拳を握りしめた。


 胸の奥が、ぐちゃぐちゃに掻き回されているような感覚だった。

悔しい。腹立たしい。殺してやりたいほど憎い。


 あの夏休み、俺は美咲に「何か予定ある?」と聞けなかった。

ただ家で悶々と過ごしていたのに、あいつは……。


 復讐してやりたい。

あいつを社会的に抹殺して、美咲に後悔させてやりたい。


 その心を治めるために、いつものように教会に行った。


 俺の家は昔からキリスト教徒で、駅の方にある大きなカトリック教会によく通っていた。


 高校生になってからは、一人でミサに行くことも増えた。

なんだかんだ静かな空間が、荒れた心を少しだけ落ち着かせてくれた。


 それに告解室で自分の過ちを吐露すると気持ちが軽くなった。


 そして、ミサが終わった後、俺は近くにいたシスターさんに声をかけた。


「すみません…… 告解をお願いしたいのですが」


 柔らかい微笑みと共に、彼女は頷いた。


「分かりました。では、告解室でお待ちください」


 告解室は聖堂の奥、ステンドグラスからの淡い光が差し込む静かな一角にある。


 小さな木の部屋が二つ並んでいて、中央の仕切りで神父様もしくはシスターさんと信者が隔てられる形だ。


 俺が入る側の扉を閉めると、木の重厚な匂いと、わずかな蝋燭の香りが鼻をくすぐった。


 薄暗くて、顔は見えない。

声だけが、仕切り越しに響く。


 少ししてから、向こう側の扉が静かに開く音がした。


「今日は、どうされました?」


 その瞬間、俺は息を飲んだ。

声で分かった。あのシスターだ。


 この教会で働くシスターたちの中でも、飛び抜けて美しい人。


 西洋系の顔立ちで、金髪のロングヘアが肩を流れ、きめ細かい白い肌が聖なる光に輝いている。

年齢は20歳前後くらいに見える。

大人びた、でも柔らかい雰囲気を纏ったシスターさん。


 黄色い瞳と、薄いピンクの唇。

修道服に包まれた身体のラインも、意外に豊かで……俺はいつも、彼女を見るたびに罪悪感を覚えながらも、目を奪われていた。


 それでも今日はそれどころではなかった。


「…実は、最近すごく苦しいんです」


 俺は震える声で、すべてを吐き出した。

美咲への10年間の想い。

告白できなかった臆病さ。

夏休み明けの教室で見た光景。

ヤリチン自慢。

周囲の視線。

美咲が俺の知らない顔で笑っていること。

そして、あのヤリチン男を殺したくなるほどの憎しみ。


「復讐してやりたい……。ダメだと思っていてもこの気持ちが治らないんです」


 しばらく、静寂が落ちた。

やがて、アリスさんの穏やかな声が、仕切り越しに響いた。


「復讐を果たしても、心は満たされません。お互いに不幸になって、それで終わりなのです。ですから、他人を不幸にするのではなく、自分が幸せになる方法を考えましょう。例えば、今のその幼馴染さんのことを忘れて、別の女性とお付き合いしてみるとか……」


 俺は苦笑した。


「……俺のことを好きな人なんていないですし」


 すると、向こうから小さく息を飲む気配がした。

そして、静かで、でもはっきりとした声が返ってきた。


「居ますよ。ここに」

「……え?」


 何を言ってるんだ?

あぁ、自分なら自分を愛せるとか…そういう話?


「その幼馴染さんの代わりに、してほしいこと、私がして差し上げます」


 告解室の薄暗がりの中で、俺の心臓が激しく鳴った。

金髪の美人シスターに逆告白をされた。

この状況が、信じられなかった。


「アリスさん……?」

「ふふ……驚かせてしまいましたか?でも、本気ですよ。悠真さんのお気持ち、ちゃんと聞いていましたから。ですから、全てを私にぶつけてください」

「いやいや…そんな…」

「私では…ダメですか?」

「そんなことは…!!むしろ…光栄というか…でも、そんなことをしても…変わらないかもしれないですよ」

「それでもいいのです。それに私はして欲しいですよ?」


 彼女の声は、いつもより少し熱を帯びていた。


「では、ここを出たら私と悠真さんは彼氏彼女の関係になる、ということで」


 俺は言葉を失ったまま、木の仕切りに額を押しつけた。


 幼馴染にNTRされた痛みと、復讐の炎が、予想もしていなかった甘い誘惑に、ゆっくりと溶かされていくのであった。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/822139844905525302

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