最愛の妻と、名前をつけることのなかった我が子を失った建築士・一真。
彼が北の霊場で出会った盲目のイタコを通して語られる、亡き妻の言葉がとても優しくて胸に響きます。
「名前という光を抱いて、黄泉の世界を迷わず歩いていける」という一節は、言葉が持つ力や、遺された人ができる祈りの形を感じさせてくれて、とても印象的でした。
厳しく美しい自然の描写と、カーテンの揺れや料理の音といった日常のやわらかな場面の対比も見事で、読み終えたあとにはどこか心が軽くなるような、静かな余韻が残ります。
大切なものを失ったあと、もう一度前を向こうとする人の物語で、優しく心に沁みる作品なので、ぜひ読んでみてほしい一作です。