竜ノ桜
二ノ前はじめ
竜ノ桜
川岸に見事な一本桜が咲いていた。
春風が吹くたびに、桜吹雪が舞った。藻が漂う川面を色づく花弁が流れていく。風流というのは、こういう景色を言うのだろう。
目を楽しませながら、
桜というのは実に不思議だ。春に着飾り、季節を過ぎれば衣を脱ぎ捨てる。うら若き乙女の美しさを
着流しの袖に腕を入れながら片手で顎を撫でる。対岸に
一人花見をしていると、突然春の嵐が吹きすさんだ。思わず背を丸める。袖が膨らみ、裾も乱れて足が覗く。渦中にある一本桜は大きく枝葉をしならせて、その彩りが失われていく。瞳を桜吹雪が覆った。
ああ、桜が散っていく。
春の嵐が収まると時を同じくして、桜色の景色が晴れる。色づく花びらを散らした桜の木を目にして、吐息が漏れ出た。今年もこれで
下駄を鳴らして背を向ける。目を落とした。
桜色が寄り集まり、あたかも絵巻物の竜を思わせる形を作った。足を止める。長い胴体をくねらせて、鹿の角が生えた頭部が
この先は、海へと通じているはずだ。尾を振りながら遠ざかっていく桜の竜をしばし見送った。
竜ノ桜 二ノ前はじめ @ninomaehajime
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます