病気と共に働く、という問い

馬渕まり

リウマチ


 伯母は美しい人でした。私の母が色黒で骨太なのに比べて、伯母は色が白くほっそりした人でした。


 伯母は時々単語に横文字が混ざりました。理由は二十年程度、米国に居たからです。戦後間も無く、貧しい日本より米国の方が稼げるだろうと伯父はロスアンゼルスへの移住を決めました。まだ幼い息子二人を連れて。


 時が経ち、日本も好景気になり、伯父が持っていた山が、宅地開発のために売れました。ある程度のお金が入ったため、五十代になっていた伯父はそれを契機に日本に戻ることを決めました。従兄弟二人は米国で育ち、向こうで就職していたため日本には戻りませんでした。


 伯母はリウマチでした。ある時、伯母は治療のため、父が務める病院に数週間の入院をしました。私はその時、伯母が病気であると初めて知りました。当時、医師住宅に住んでいたため病院は隣にありました。


 小学生だった私は、見舞いの菓子を狙って、よく伯母の病室に行きました。その時、伯母の指が少し曲がっていることに気づきました。

「おばちゃん、どうして指が曲がっているの?」


伯母は「リウマチという病気だから」と教えてくれました。

「痛くないの?」と聞いたら「痛くないから大丈夫だよ」と笑って頭を撫でてくれました。

 今なら分かります。嘘だったと。


 伯母の病気は徐々に進み、正月に会うたび伯母は弱っていきました。杖になり、車椅子になり、とうとうベッドから起きられない身体になりました。幼い頃に見た、夢二の絵のような美人の面影はありませんでした。


 私の専門は糖尿病です。メインで関節リウマチを診察してはいませんが、リウマチに罹患している方も何人か通院されています。

 主科ではないためと、生物製剤など医療が進歩したせいか、伯母ほど変形した手を見たことはありません。

 しかし、お元気そうに見えても痛みは分かりませんし、経過で間質性肺炎を併発される方もおられます。


 リウマチを持ちながら、フルタイムで仕事をしている知人もいます。見た目は全く病気があると分かりません。でも、やはり「朝は痛みが辛い」と言っていました。


 余談ですが、私は労働衛生コンサルタントの資格を持っています。人間、歳をとるとさまざまな病気がでてきます。

 定年まで病気とは無縁!という方もおられますが、病気を持ちながら、中には大病をしても働かれている方もたくさんおられます。

 病気を持っている方が、「病気を悪化させることなく働ける」というのは産業衛生の目標の一つです。


 政治家の方の病気に関し、色々な意見が出ていますが、これを契機に「病気と共に働く」ことの意味を考えてみてください。

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病気と共に働く、という問い 馬渕まり @xiaoxiao2

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