世界観の説得力が非常に強い、上手い
- ★★★ Excellent!!!
「死が日常になった日本」というハードな世界観の中で、「合理性」に振り切った主人公・茂と、「生活の生々しさ」を体現するヒロイン・ユイの対比が鮮烈です。
「合理性」という名の狂気
冒頭の水族館のシーンが圧巻でした。赤ん坊を「捕食反射を誘発する餌(デコイ)」として利用し、その隙に害獣を仕留めるという茂の行動は、倫理的には「化け物」ですが、駆除屋としては「正解」です。
この「命の重さを無視した最適解」を淡々と選ぶ茂のキャラクター造形が、今の日本が抱える閉塞感や、システムに最適化されすぎた現代人の危うさを象徴しているようで、ゾクりとしました。
「最初は動物と呼び、次に正体不明の生物、最終的に『害獣』という行政用語に落とし込むことで社会が平静を装う」というプロセスに、凄まじいリアリティを感じました。
パニックホラーではなく、「異常が日常の事務作業に変わっていく過程」を描くことで、読者はこの世界が「自分たちの地続きにある」と感じさせられます。
静謐で乾いた文体でありながら、根底にはドロリとした人間の業が流れているような、非常に魅力的なノワール・フィクションだと感じました。
「英雄になれない男」と「性を売る女」が、この壊れた世界でどのような「愛おしい猟奇的な日常」を積み重ねていくのか。100万円で手に入れた槍が、次に何を貫くのか。続きが読みたくてたまらなくなるプロローグです。