オッペンハイマーの悪夢はここに現実となる

 史実の戦争を題材にしながらも本来の歴史の流れとは一部違った条件を加えることで、歴史のifを描く架空戦記もの。太平洋戦争を扱った場合、敗色濃厚の日本をいかにして逆転させるかというのがポイントになるが、本作ではなんとアメリカに先駆けて日本が核爆弾の開発に成功するというとてつもない逆転劇が描かれる!

 現実の戦争では最後の最後にダメ押しとして日本に投下された核爆弾だが、本作の核は日本が逆転への足がかりとして放つことになる。劣勢の戦況を覆さなければならないのだから、当然一発や二発で済むはずがない。

 まずは硫黄島、そして太平洋沿岸で反撃の狼煙として上がるキノコ雲。この勢いでアメリカ本土への爆撃も視野に入れる日本だが、一方でマンハッタン計画を進行中だったアメリカも「核には核を」という姿勢で日本への反撃を試みる。

 こうしてかつてないスケールで始まる全面核戦争。相互確証破壊なんて概念はなく、決戦兵器であるはずの核爆弾が通常兵器のごとく惜しみなく放たれる光景は、おぞましくも実に壮観。

 戦場ごとに視点人物が切り替わり、特定の誰かが主人公というわけではなく、言うならば核爆弾こそが主役ともいえる本作。地獄への道をひたすら突き進むこの世界にどのようなピリオドが打たれるのか、狂気の歴史の証人として見守っていきたい。


(「歴史を感じる4作!」/文=柿崎憲)

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