真夏の廃墟には、何者にもならない異人がいた。

誰の目にも触れない絵。
誰の耳にも届かない音楽。
陸にあがった鯨のような、真夏の廃墟。
そこには『無意味』を愛する不思議な絵描きがいる。
『君を歓迎する』
何者にもなれなかったバイオリン弾きの少年が、絵描きとの短い出逢いで、意味から解放された世界を知っていきます。
永遠と刹那というか、物凄く深い世界観があります。
廃墟もやがては森に呑み込まれ、鯨は海に還る。
読み手の知覚も、呑み込まれる。
蜃気楼ごしに見える蒸れた廃墟と、鯨のふるさとの『海』が脳内で二重映しになって‥‥
またしても夢見里龍さんワールドに圧倒されました。

タイトルの『52ヘルツで鳴く鯨』。
追跡研究されている、実在の一頭なんですね。
他の仲間には聞こえない周波数で鳴く、別名『世界で最も孤独な鯨』だそうです。
世界観の深みが増すエピソードでした。

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