第7話
翌日。
俺たち3人は、Dランクダンジョン『地下墓地』の前に立っていた。
ジメジメした空気と、カビの臭い。
アンデッドモンスターの巣窟として有名な場所だ。
「それじゃあ、配信開始するよ」
ドローンカメラを飛ばし、タイトルを設定する。
『追放された聖女(核弾頭)を拾ったので、性能テストしてみた』。
煽り全開のタイトルだが、注目を集めるにはこれくらいがいい。
開始早々、コメント欄が加速する。
《うわ、噂の核弾頭聖女じゃん》
《湊、命知らずすぎるだろ》
《放送事故(爆発)待ちですw》
《前のギルドから追放された子だよね? 大丈夫か?》
視聴者は懐疑的だ。
当然だろう。エリスの悪評はギルド界隈では有名らしいから。
「神使様……私、本当に大丈夫でしょうか?」
エリスが不安そうに俺の服の裾を掴む。
「大丈夫。君の力を見せつけてやろう」
「……チッ」
隣で彩音さんが盛大に舌打ちをした。
不機嫌オーラがすごい。
でも、いざ戦闘になれば頼りにしてるから許して。
ダンジョンに入ると、早速お出ましだ。
地面から骨の手が伸び、ガチャガチャと音を立ててスケルトンの群れが現れる。
その数、二十体以上。
「行くわよ」
彩音さんが疾走する。
銀閃一閃。
先頭のスケルトンの首が飛び、粉々に砕け散る。
さすがの威力だ。
だが。
カカカカ……ッ!
砕けた骨がひとりでに集まり、数秒で元通りに再生してしまった。
「くっ、これだからアンデッドは嫌いなのよ!」
物理攻撃の効きが悪い上に、再生能力持ち。
剣士の天敵だ。
彩音さんが何度斬っても、ゾンビのように復活してくる。ジリ貧だ。
《あー、これは相性悪いわ》
《聖職者がいないとキツイぞ》
《おい核弾頭、出番だぞ。爆発させずに浄化できるか?》
俺は視界の未来コメントに目を走らせた。
最適解はなんだ?
【物理で殴るな、浄化しろ】
【エリスの『聖なる灯火』を使わせろ】
【ただしそのまま撃つな。彩音の剣にエンチャントだ】
【範囲は半径50センチ固定。それ以上広げるとダンジョンが消し飛ぶ】
了解。
「エリス! 『聖なる灯火』だ! ただし敵に撃つな、彩音さんの剣に纏わせろ!」
「えっ、剣にですか!?」
「そうだ! 範囲は半径50センチ! イメージしろ、剣を包む小さな炎だ!」
「は、はいっ!」
エリスが杖を構える。
彼女は昨日の特訓を思い出したのか、一点集中で魔力を練り上げる。
「清らかなる導きの光よ……宿れ!」
カッ!!
エリスの杖から放たれた光が、彩音さんのレイピアに吸い込まれるように纏わりついた。
暴走も爆発もしない。
ただ、神々しい黄金の炎が、刃を包み込んでいる。
「な、なにこれ……すごい力が溢れてくる!」
彩音さんが目を見開く。
彼女は迷わず、再生したスケルトンを一薙ぎした。
ジュワァァァァッ!!
「ギャアアアアアッ!?」
剣が触れた瞬間、スケルトンは再生する間もなく灰になり、蒸発した。
圧倒的な浄化力。
ただの支援魔法が、エリスの規格外の魔力によって『対アンデッド特攻の聖剣』へと昇華されたのだ。
「いける……これなら、いくらでも斬れるわ!」
彩音さんが舞う。
黄金の軌跡が描かれるたびに、不死者たちが塵へと還っていく。
一方的な蹂躙劇。
コメント欄が、一瞬で手のひらを返した。
《は? 強すぎんだろ》
《エンチャントであの火力? バグかよ》
《暴走してない……だと?》
《制御できてるじゃねーか!》
《前のギルド、こんな有能を捨てたのかwww》
《見る目なさすぎワロタ》
《『鉄の牙』涙目敗走で草》
よし、計画通り。
これでエリスの汚名は返上だ。
戦闘終了。
スケルトンの群れは全滅し、俺たちの勝利だ。
「や、やりましたぁぁぁ!」
エリスが杖を放り出し、満面の笑みで俺に突進してくる。
「見ましたか神使様! 私、お役に立ちましたよね!? 爆発させませんでしたよね!?」
「ああ、完璧だったよエリ――」
ガシッ。
俺に抱きつこうとしたエリスの額に、レイピアの柄がめり込んだ。
彩音さんが無表情で阻止していた。
「……調子に乗らないで。あくまで私の剣が凄かっただけだから」
「あいたぁっ!? ひ、ひどいです! 感動の抱擁シーンだったのにぃ!」
「却下。湊くんに触れていいのは、パーティリーダーである私だけ」
「そんな理屈ないですよぉ!」
ギャーギャー騒ぐ二人。
俺は苦笑いしながら、コメント欄を見つめた。
《ハーレム乙》
《聖女ちゃんかわヨ》
《ざまぁ完了してて草》
《このパーティ、推せるわ》
同接300人突破。
俺たちの快進撃は、まだ始まったばかりだ。
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