世界を救った、勇者アルベルト 夢のハーレム生活始める。伝説のサキュバスを求めて
虫松
プロローグ 勇者アルベルトが死んだ。
世界を、救った。 悪魔王ガイアスを打ち倒し、魔王と和平協定を結び、長きにわたる人間と魔族の争いに終止符を打った。 そして私たち勇者一行は、それぞれの道へと散った。 村人リスクはシスターマリアと結婚。
「あの人、昔はただの村人だったのに……」
などという少女時代の妄想が現実になった瞬間だ。 めでたい。お幸せに。
二人の新居には転送魔法陣を置いてやった。ノックなしで突然現れてやる予定だ。 勇者は?というと
「俺は夢のハーレム実現するために女の子たちに囲まれて、第二の人生をエンジョイするぜ★」 そう言い残して、どこかへ消えた。 こっちもある意味、めでたい。
……で、私はというと。 独りぼっちになった。
あれから、数十年
私はリスクとシスターマリアの子供である、弟子のサーテンリと放浪の旅をしている。
世界を救った黒魔術師 マーリン(人魚族と魔族のハーフ) 352歳、独身。 黒魔術師を極めし者。 救世主なのに婚期を逃すという、まさかのスキル取得。
今日は、勇者アルベルトが70歳でお亡くなりになった。
という事でお葬式に行く準備をしている。
黒のローブを羽織り、杖の先端を軽く鳴らす。
指先は相変わらずよく動くが、鏡に映る自分の顔は――昔より、ほんの少しだけ人間に近づいた気がした。
「マーリン師匠、まだですか? もう鐘、三回鳴りましたよ」
背後から、せかすような声。
リスクとシスターマリアの子――私の弟子、サーテンリだ。
「急かすな。葬式というのはな、遅れて行くくらいがちょうどいい」
「それ、絶対ただの言い訳ですよね」
苦笑しながらも、サーテンリは旅袋を肩にかける。
その仕草が、どこかあの勇者に似ていて、胸の奥が少しだけ軋んだ。
「……マーリン師匠」
「なんだ」
「勇者アルベルトって、世界を救ったあと、どうしてたんですか?」
歩き出しかけた私の足が、止まる。
ああ、そうか。
この子は知らないのだ。
“その後”の勇者を。
「葬式に行く汽車の中で話してあげるわ」
サーテンリは、少し困ったように笑った。
「……じゃあ、マーリン師匠、行きましょうか。勇者のお葬式」
「ああ。私は、かつての仲間を見送らねばならん」
扉が開き、光が差し込む。
世界を救った勇者アルベルトの、誰にも語られない“その後”のお話を。
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