鏡合わせの救済。こんなに美しいなんて……

「生まれ変わっても、また自分になりたいか?」

 という問いに、力強い答えを出す主人公に、私は羨望を抱いた。

 実は私自身、かつては左利きでした。
 しかし、幼少期に矯正され、今は右利きとして生活しています。
 だからこそ、著者が綴る「自分の身体が自分のものではないような疎外感」や、習字の時間だけが「正解」に触れられたというエピソードが、古傷をなでるように切なく響きました。

 私は「正しさ」と引き換えに左手を自在に扱う感覚を失ってしまいましたが、主人公の左手は、周囲の拒絶に抗い、頑固にその役割を守り抜いた。その強さが、どこか眩しく美しく映ったのです。

 物語の終盤、娘さんとのやり取りには涙ぐんでしまいました。
 世界から否定され続けた左手が、ある純粋な視点によって肯定される瞬間。かつて祖父から与えられた「正しさへの安堵」が、「ありのままへの愛」へと昇華されていく光景は、あまりにも温かいものでした。

 不便さを呪うのではなく、反転した視線があるからこそ気づける温もりがある。この作品は、自分の一部を否定し続けてきたすべての人に、「そのままでいい」と優しく手を差し伸べてくれる一編です。

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