第57話 コロの嗅覚がチート級! あっという間に群生地を発見

 ウィンドウには、ご丁寧に3Dモデルまで表示されている。

 くるくると回転させながら、葉の形、茎の色、根元の特徴まで、じっくりと観察する。

 うん、これなら見間違えることはないだろう。


「よし、覚えた! これと同じ葉っぱを探すんだ!」


 私は、地面に視線を落とし、神経を集中させる。

 銀色がかった、ギザギザの葉っぱ……。

 銀色がかった、ギザギザの葉っぱ……。


 ……ない。

 いや、ある。ありすぎる!


(うわ、似たような葉っぱ、めちゃくちゃいっぱいあるじゃん!)


 森の地面は、多種多様な植物で覆われている。

 朝露に濡れて銀色っぽく光る葉っぱもあれば、虫に食われてギザギザになっている葉っぱもある。

 ウィンドウの画像と見比べては、「あ、これは違う」「こっちも違うな」と、一つ一つ確認していく。

 地味だ。なんて地味な作業なんだ!


『コトリ、どうした?』


 私がうんうん唸っていると、コロが心配そうに私の顔を覗き込んできた。


「うーん、この葉っぱを探してるんだけど、なかなか見つからなくて」


 私は、ウィンドウの画像をコロに見せるようにしながら、頭の中でナイト・グロウのイメージを強く思い描く。もちろん、コロにはウィンドウは見えていないけど、私の【もふもふテイマー&翻訳】の能力なら、ぼんやりとしたイメージくらいは伝わるかもしれない。


『ふむふむ。銀色で、ギザギザ……』


 コロは、何かを理解したように頷くと、くんくんと地面の匂いを嗅ぎ始めた。

 でも、お手本となる本物の匂いがないせいか、コロも首を傾げている。


(だめかー。やっぱり、最初の一本は、私が自力で見つけるしかないか!)


 気を取り直して、再び地面とのにらめっこを再開する。

 前世での、書類の山から目的の一枚を探し出す作業を思い出す。あの頃鍛えた集中力が、今ここで役に立つとは……人生、何が幸いするか分からんもんだな!

 そして、10分ほど経っただろうか。


 大きな木の根元、苔むした岩陰に、ひっそりと生えている一株の植物が、私の目に留まる。

 他の植物とは明らかに違う、独特の銀色の輝き。

 ノコギリのように細かく、特徴的なギザギザの形をした葉。


「……あった!」


 思わず、声が出る。

 ウィンドウの3Dモデルと、寸分違わぬ姿。

 これだ! 間違いない!


(根っこからってことだったな……)


 私は、四次元バッグから園芸用スコップを取り出し、宝物を掘り当てる考古学者みたいに、慎重に、丁寧に、そのナイト・グロウを根っこから掘り起こした。

 土を優しく払い、その銀色の葉を手に取る。


「コロ、これだよ! この匂い、覚えて!」


 私は、掘り出したばかりのナイト・グロウを、コロの鼻先にそっと近づける。

 土の匂いと、植物の青々しい匂い。そして、ナイト・グロウだけが持つ、わずかに甘く、清涼感のある独特の香り。

 コロは、くんくん、と数回匂いを嗅ぐと、全てを理解したように、ぱっと顔を上げた。

 そして、自信満々に一声鳴いた。


『わかった! この匂い、知ってる!』


「本当!?」


『うん! 森の奥! いっぱい匂いする!』


 なんと!

 我が家の相棒、優秀すぎる!

 お手本さえあれば、あとはコロの独壇場だ!


「よし、コロ! 案内して!」


『任せて! こっち!』


 コロは、嬉そうに尻尾を振ると、白い弾丸のように森の奥へと駆け出していく。


「わ、ちょっと待ってよ、コロ!」


 私も慌ててその後を追いかけるが、10歳の子供の足では、コロのスピードには到底追いつけない。

 少し進んだ先で、コロはぴたりと足を止め、不思議そうにこちらを振り返った。そして、私が追いつくのを待つと、今度は私の歩調に合わせてゆっくりと歩き始めた。時々、ちゃんとついてきているか確認するように、ちらちらと私を振り返りながら。


(……うっ、賢い! 気遣いまでできるなんて! うちの子、完璧すぎる!)


 そんな頼もしいナビゲーターの先導で、私たちは森の奥へと進んでいく。


 コロの嗅覚ナビゲーションは、最新のカーナビよりも正確だった。

 そこからは、一度も迷うことなく、最短ルートで、ナイト・グロウの群生地へと私たちを導いてくれる。


 15分ほど歩いただろうか。

 木々の隙間から、少しだけ開けた場所に出た。

 そこには、陽の光を浴びて、銀色にキラキラと輝く葉っぱたちが一面に生い茂っていた。

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