人生の目次にふと迷う時、この物語を栞にして───

いつ、どこで、この人生を間違えてしまったのだろう。

そんな後悔に呑まれる夜が、人には誰しもあるのかもしれません。

社会からは軽んじられ、家族からは見捨てられ、それでも“まだ終わっていない”と信じたい男の叫びを、今日も街は聞こえないふりして廻っていく……。


そんな男の前に現れたのは、一軒の小さな古本屋。

店主は夢の“値”を、男の胸に問いかける。

望んだその夢とは本当に、宝くじ一等のような7億円の“値”なのだろうか……。


人生に少しずつ差し込むその光は、壇上のスポットライトなどではなく60ワットの部屋の明かり。聞こえてくるのは楽団によるファンファーレなどではなく、季節外れの風鈴の音。

人生における“夢”とは、“値”が付けられない幸福の価値を自分で見つけられるかどうかなのでしょう。

後部座席でうたた寝する家族を乗せて、その中古車は時速40㎞以下でゆっくり進む。

そうした幸福の1ページを書き記して忘れないようにするために、この「人生」という名の一冊の本は、誰しもの胸の中にあるのだと思います。

ペンはきっと、7億円で買わずともすぐそこにある。あなたの胸ポケットに……。


ふと人生に迷った時に、栞を挟むようにして心にとどめたくなる、小さな奇跡の物語でした。

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