「父を殺す」タイムリープは目的を果たす手段と成りうるか

  • ★★★ Excellent!!!

「モイライ」
この言葉を知らないまま最終話まで読み進めました。読み終えた後にふとタイトルの意味が気になり、調べ、それは深い、深いため息をつくことになりました。

愛する夫、息子と共に幸福な人生を歩んでいた書子(ふみこ)。唯一の汚点といえるのは犯罪歴をもつ父の存在。そしてついに父が起こした小学生を巻き込んだ交通死亡事故を機に、書子の生活はめちゃくちゃになってしまう。
「父を殺しておくべきだった」
後悔を胸に翌朝目を覚ますと小学生に戻っていた書子。彼女の目的は達成されるのか。そのために起こした行動は、書子と周囲の人々にどのような未来をもたらすのか。

タイムリープしてしまった一人の女性の一生を追った物語です。
最初の人生では出会わなかった人々との関わり、再び出会ってしまった人との過去とは違ってしまった関係性。同じように進むことは何一つなく、この選択が正しかったのかと常に悩み続けます。
強い気持ちで選ぶこともあれば、流されて選択してしまうこともある。波乱万丈の人生を送ることになってしまった書子に幸せを掴んでほしくて、かなり感情移入して読み進めました。
ただこの辺りはの感想は個人差があるのかも。この人結構ふらふらしている部分があるのも否めないので…(苦笑)
それでも悩み抜いて選択し、目まぐるしく変化する展開は一度読み始めてしまえば止めることができなくなります。忌まれるような感情をも人間臭く魅力的に描き、読者を捕らえて離さない手腕に心の底から呻らされます。

読後に私に深いため息を与えてくれた「モイライ」。女神たちは人間にどのような運命を背負わせようというのか。
この箱庭を眺めれば、私の感嘆のため息の理由をご理解いただけるかと。ぜひこの感情を多くの方に感じてほしい物語です。

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