「君との幸せな未来」を売る詐欺師に寝取られたので、愛を捨てた俺が彼女の全財産と間男の人生を【完全解体】して絶望のどん底へ叩き落とす話
番外編 毒を食らわば皿まで、愛を乞うなら地獄まで――隣の席を勝ち取った少女の、冷徹で甘い完全勝利宣言
番外編 毒を食らわば皿まで、愛を乞うなら地獄まで――隣の席を勝ち取った少女の、冷徹で甘い完全勝利宣言
呀様は、とても残酷な人だ。そして私は、そんな彼の残酷さを、この世界の誰よりも愛している。
都心の一等地、地上二百メートルに位置するホテルのスイートルーム。窓の外には、まるで銀河をひっくり返したような東京の夜景が広がっている。さっきまで私たちがいたあの薄汚れた下町の空気とは、酸素の濃度さえ違うような気がした。
「琥珀、何をぼんやりしているんだ。シャンパンが温くなるぞ」
ソファに深く腰掛け、バスローブ姿でグラスを傾ける呀様が、低く心地よい声で私を呼んだ。私はハッとして、手に持っていたクリスタルグラスを見つめる。黄金色の泡が、私の勝利を祝福するようにパチパチとはじけていた。
「すみません、呀様。……ただ、少しだけ思い出していたんです。あの、月詠澄香という女が、最後にどんな顔をしてパトカーに乗せられていったかを」
「趣味が悪いな」
呀様は苦笑したが、その瞳には否定の色はなかった。彼は知っているのだ。私がこの「清算」という仕事に、どれほどの情熱と、そして個人的な愉悦を注ぎ込んできたかを。
私、狗巻琥珀が呀様と出会ったのは、三年前のことだ。
当時の私は、親の借金のカタに売られそうになっていた、ただの絶望的な女子大生だった。そんな私を、彼は事務的に、淡々と「清算」してくれた。親との縁を切り、借金を法的に消滅させ、私に「狗巻琥珀」という新しい名前と、彼のパートナーとしての居場所を与えてくれた。
あの日から、私の心臓は呀様のものだ。
彼が白と言えば夜でも太陽は昇るし、彼が死ねと言えば私は微笑んで喉を掻き切るだろう。それほどの忠誠を誓った私の前に、四年前から居座っていたのが、あの月詠澄香という女だった。
正直に言って、理解に苦しむ存在だった。
呀様が正体を隠し、あえて「売れないライター」を演じているのは、彼女の本質を見極めるためのテストだった。それは理解できる。でも、四年間も。あんな、向上心だけが空回りした、中身の空っぽな女のために、呀様が安アパートで質素な生活を強いられていたことが、私は我慢ならなかった。
モニター越しに彼女の生活を監視するたび、私の指先は怒りで震えた。
呀様が心を込めて作った料理に文句を言い、呀様が必死に書いた原稿を「小銭稼ぎ」と馬鹿にする。そのくせ、自分はブランド品や成功者とのコネクションを夢見て、鏡の前で浅ましい笑顔を練習している。
「あんな女、今すぐ解体してしまえばいいのに」
何度そう思ったか分からない。でも、呀様は「まだだ」と言って私を止めた。
「果実が最も熟し、腐り落ちる瞬間が、一番美しい清算ができる」
彼はそう言って、静かに、執念深く、彼女が自分から地獄へ飛び込むのを待っていたのだ。
そして、神宮寺という安っぽい詐欺師が現れた時、私はようやく、呀様の「本当の狙い」を理解した。彼は、澄香に裏切られるのを待っていたのではない。澄香が「自分の意思で」彼を捨て、彼から金を奪い、そして絶望のどん底で「自分の間違い」を骨の髄まで理解する、その完璧なプロットを完成させるためのピースが揃うのを待っていたのだ。
「一条愛里」としての仕事は、最高に楽しかった。
神宮寺のような、女の欲望を利用することしか能のない男を、さらに巨大な「欲望」で釣り上げ、一歩ずつ破滅へと誘導する。彼が私に跪き、澄香から奪った金を「どうか受け取ってください」と差し出してきた時、私は笑いを堪えるのに必死だった。
(バカな人。あなたが今、私に捧げているそのお金は、元々は呀様のものなのに)
神宮寺が逮捕され、澄香がすべてを失ったあの雨の夜。
アパートの階段の下で、呀様の隣に並んだ瞬間の全能感を、私は一生忘れないだろう。
泥にまみれ、助けを求めて這いつくばる澄香。彼女がかつて「汚れるわ」と言って触れることさえ拒んだ呀様の手は、今は私の腰を優しく、そして力強く抱き寄せている。
「澄香、もう遅いんだよ。その席、もう埋まってるんだ」
呀様のその言葉を聞いた瞬間、私の心は歓喜で震えた。
四年間、ずっと空席だった彼の隣。
自称「恋人」だった女が、その価値に気づかずに放置していた、世界で一番贅沢な特等席。
それを今、私が完全に、永久に手に入れたのだ。
「呀様。……澄香さんのこと、少しは憐れだと思わないんですか?」
私はわざと意地悪な質問をしてみた。
呀様はグラスをテーブルに置き、私の髪にそっと触れた。その指先の温度に、私の心臓が跳ねる。
「憐れ? ……いや。彼女は望み通り、『特別な人生』を手に入れたじゃないか。一生消えない罪と、一生癒えない後悔。それはある意味、平凡な幸せよりもずっと刺激的で、彼女に相応しい『特別』だろう」
「ふふ、やっぱり呀様は性格が悪い。最高です」
私は彼の胸に顔を埋めた。
そこからは、彼が愛用している少し苦い煙草と、洗練された香水の匂いがした。あの安アパートで漂っていた、生活感の塊のような匂いはもうどこにもない。
「琥珀、君には苦労をかけたな。これからは、もうあんな変装も、汚いアパートでの監視も必要ない。……これからは、俺の隣で、俺の資産を自由に使いながら、俺と一緒にこの世界の『不純物』を片付けてもらう」
「はい、喜んで。……あ、でも一つだけ条件があります」
「条件?」
私は顔を上げ、彼の瞳をじっと見つめた。
「次の仕事でも、その次でも、もし呀様を誘惑しようとする悪い女が現れたら、私が一番に残酷に解体してもいいですか? 呀様の隣に座る資格があるのは、世界中で私だけだって、分からせてあげたいんです」
私の独占欲を隠そうともしない言葉に、呀様は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに声を上げて笑った。
「いいだろう。君の好きなようにしろ。……ただし、俺を飽きさせないでくれよ」
「もちろんです。呀様が私なしではいられないように、たっぷり毒を回して差し上げます」
私たちは、夜景をバックに深いキスを交わした。
シャンパンの甘みと、復讐の余韻が混じり合い、これ以上ないほど甘美な味がした。
窓の外では、月詠澄香や神宮寺煌流が今も地獄の苦しみを味わっているだろう。
でも、そんなことは今の私にはどうでもいい。
彼らが不幸になればなるほど、私たちの幸せは輝きを増す。
彼らが失ったものの大きさが、そのまま私の「勝利の重み」になるのだ。
「ねえ、呀様。……明日、何を食べたいですか?」
「そうだな。……あのレトルトカレーだけは、もう勘弁してくれ」
「あはは! そうですね。じゃあ、銀座の一流シェフを呼んで、世界で一番高いカレーでも作らせましょうか」
「それもいいな」
私たちは、取り留めのない、しかし最高に贅沢な会話を楽しみながら、夜を明かした。
かつて澄香が「退屈だ」と言って切り捨てた呀様との時間は、今の私にとっては、一分一秒が宝石のように輝いている。
彼女は気づかなかったのだ。
呀様という男が、どれほどの愛を秘め、どれほどの力を持ち、そしてどれほど一途に、隣にいる女性を守ろうとしていたか。
その価値に気づけなかった彼女は、最初からこの席に座る資格なんてなかった。
「呀様……」
私は彼の手を取り、自分の頬に寄せた。
この大きな手、この温もり。
これはもう、誰にも渡さない。
もし誰かがこの席を奪おうとするなら、私は「一条愛里」よりも、もっと残酷な魔女になって、その女の人生を解体してやる。
呀様は私の頭を優しく撫で、耳元で囁いた。
「琥珀、お前は本当に……最高に悪い子だ」
「はい。呀様の、最高のパートナーですから」
私たちは笑い合い、深い眠りについた。
明日から、新しい毎日が始まる。
呀様と私が、この世界のゴミを掃除し、その対価として得た富で、誰も邪魔できない楽園を築いていく毎日。
澄香、聞こえる?
あなたが「掃き溜め」だと笑ったあの男は、今、私の隣で、あなたが見ることさえ許されなかった最高の景色を眺めているわ。
あなたは冷たい床の上で、せいぜい私の幸せを呪っていなさい。
あなたの呪いさえも、私たちの愛を深めるスパイスにしかならないのだから。
私は夢の中で、呀様と新しい旅に出る計画を立てた。
次は、どんな悪い奴らを地獄に送ろうか。
どんな嘘をついて、どんな風に相手の人生を粉々にしてやろうか。
呀様と一緒なら、どんな残酷な仕事も、世界で一番甘いデートになる。
「……大好きですよ、呀様。ずっと、ずっと……」
勝利の余韻に包まれながら、私は深い幸福の中に沈んでいった。
隣には、私が命をかけて守り、愛し抜くと決めた、世界で唯一の、残酷な王子様が眠っている。
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