「君との幸せな未来」を売る詐欺師に寝取られたので、愛を捨てた俺が彼女の全財産と間男の人生を【完全解体】して絶望のどん底へ叩き落とす話
番外編 偽りの王が堕ちる時――神宮寺煌流の傲慢なる誤算と無惨な末路
番外編 偽りの王が堕ちる時――神宮寺煌流の傲慢なる誤算と無惨な末路
六本木の会員制ラウンジ。重厚な革張りのソファに深く腰を下ろし、俺、神宮寺煌流は、グラスの中で琥珀色に輝く三十年物のマッカランを愛おしそうに眺めていた。バカラ製のグラスが放つ繊細な輝きは、まさに俺の人生そのものを象徴している。
「煌流さん、本当に素敵……。私、あなたに出会えて、本当の意味で人生が始まった気がするわ」
隣で熱っぽい視線を送ってくるのは、月詠澄香だ。つい先日まで、冴えないフリーライターの男と薄汚いアパートで同棲していたという、典型的な「埋もれていた原石」である。もっとも、俺から言わせれば、彼女は原石などではない。少し磨けば安っぽく光り、少し煽れば際限なく欲を出す、扱いやすい「カモ」の一羽に過ぎなかった。
「当たり前じゃないか、澄香。君のような美しい女性が、あんな底辺の男と泥を啜るような生活をしているなんて、社会的な損失だよ。僕の側こそ、君に相応しい場所なんだ」
俺は彼女の肩を抱き寄せ、耳元で甘く囁いた。澄香は顔を赤らめ、うっとりと目を閉じる。チョロいものだ。女性が何を求めているか、それを理解するのは俺にとって呼吸をするよりも簡単だった。彼女たちは「愛」を求めているのではない。自分が「選ばれた特別な存在である」という確信を欲しがっているのだ。
俺は自分を「次世代型経営コンサルタント」と名乗っているが、その実態はもっと効率的なビジネスだ。自分を磨き、高級車を乗り回し、SNSで成功者を演出する。そうすれば、澄香のような女は向こうから勝手に寄ってくる。あとは夢を見せ、少しずつ現金を絞り取っていくだけだ。
「……ねえ、煌流さん。あの三百万、投資の方には回せたかしら? あれ、呀と貯めてたお金だったから、早く増やして彼を見返してやりたいの」
「ああ、もちろんだよ。すでに僕のプライベートファンドで運用を開始している。来月には、少なくとも二倍にはなっているはずだ。……でも、澄香。もっと大きな夢を見たくはないかい? 港区のタワマンに住み、毎日をバカンスのように過ごす……。それには、もう少しだけまとまった資金が必要なんだ」
「一千万、だっけ……?」
「そう。でも、君にはその価値がある。僕がバックアップするから、消費者金融や親戚から少し工面してごらん。それは『借金』じゃない、未来への『投資』なんだよ」
澄香は不安げな表情を見せたが、俺が彼女の手を握り、真剣な眼差しを向けると、すぐに「……わかったわ。私、煌流さんのこと信じてるから」と頷いた。
愚かだな、と内心で嘲笑う。
澄香の前の男、確か一之瀬呀だったか。あの男の顔を思い出すたびに、俺は愉快な気分になった。冴えない顔、安っぽい服、そして何より、彼女を繋ぎ止めておくための金も度量もない。彼女を奪った時のあの男の絶望に満ちた顔は、最高に美味なスパイスだった。
しかし、その時の俺はまだ気づいていなかった。
俺が「カモ」だと思っていた女の背後に、本物の怪物が潜んでいたことを。
異変が起き始めたのは、澄香から二千万近い金を引き出した直後だった。
俺の周辺で、不穏な動きが加速したのだ。これまで俺を信じ切っていたはずの他の女たちが、一斉に手のひらを返したように騒ぎ始めた。
「煌流! 投資してたお金、いつ返してくれるの!? 家にまで督促状が届いてるんだけど!」
「あんた、他にも女がいるんでしょ! 全部バラしてやるわ!」
鳴り止まない電話。ネット上に書き込まれる俺の本名と詐欺の手口。
焦った俺は、さらなる「大金主」を探す必要に迫られた。そんな時、西麻布のバーで出会ったのが、あの「一条愛里」だった。
彼女は別格だった。
纏っている空気、身につけている装飾品、そして何より、一条グループの令嬢という肩書き。彼女さえ手に入れれば、これまでの小銭稼ぎなどすべて帳消しにできる。そう確信した俺は、澄香のことなど一瞬で頭から消し去り、愛里への猛アタックを開始した。
「愛里様、僕のような人間があなたに声をかけるのは不遜かもしれませんが……」
俺は、これまで培ってきたすべての演技力を動員し、彼女に「孤独な天才起業家」としての姿を提示した。愛里は興味深そうに俺の話を聞き、やがて優雅に微笑んだ。
「神宮寺様、あなたの情熱は伝わりましたわ。……ちょうど、父の秘密のプロジェクトで出資者を探していましたの。もし、あなたが誠意を見せてくださるなら、私から父に口添えをしてもよろしいですわよ」
誠意。それはすなわち、キャッシュのことだ。
俺は歓喜に震えた。目の前の餌があまりに巨大すぎて、それが「罠」である可能性など、一分たりとも考えなかった。俺は澄香から巻き上げた最後の一滴までの金と、裏社会の連中から「すぐに転がして倍にする」と約束して預かった金を、すべて愛里の指定した口座に叩き込んだ。
これで俺は、真の王になれる。
偽物のコンサルタントではなく、本物の支配者になれるのだ。
だが、振り込みを完了した翌朝、俺を待っていたのは一条家からの招待状ではなく、警察の冷たい鉄格子と、人生を完膚なきまでに破壊する「真実」だった。
取調室の硬い椅子に座らされ、俺は未だに事態が飲み込めずにいた。
「……何かの間違いだ! 私は一条グループの令嬢と契約を交わしたんだ! 彼女を呼んでくれ!」
俺が叫ぶと、刑事は冷ややかな目で俺を見つめ、一枚の写真を机に置いた。
「一条愛里? そんな女は一条家の戸籍には存在しない。お前が金を振り込んだのは、海外の洗浄用口座だ。……それよりも神宮寺、お前に『清算』を依頼した人物から、膨大な証拠資料が届いているぞ」
「……清算? 誰だ、それは」
「一之瀬呀。お前が『冴えないライター』だと思っていた男だよ。……彼は業界では有名な『ソーシャル・デストラクター』だ。人間関係を清算し、社会的なゴミを排除するプロだよ」
頭を殴られたような衝撃が走った。
一之瀬呀? あの、澄香に捨てられて泣いていた、あの男が?
「嘘だ……、そんなはずはない。あいつはただの敗北者だ! 澄香を俺に寝取られた、負け犬なんだ!」
「負け犬か。……彼は最初からお前を監視していた。お前が澄香に接触し、彼女が裏切るタイミングを計っていたんだよ。彼女が自ら罪を犯し、お前が彼女の全財産を吸い上げた瞬間、彼が用意した『一条愛里』という罠にお前が食いつくように仕向けられていたんだ」
俺は震える手で頭を抱えた。
思い返せば、すべてがおかしかった。澄香があんなに簡単に俺に靡いたことも、都合よく愛里が現れたことも。すべては、一之瀬呀という男が描いたシナリオの上だったのか。俺は、自分を「獲物を狙うハンター」だと思い込んでいたが、実際は、張り巡らされたクモの巣に自ら飛び込んだ蝿に過ぎなかったのだ。
「神宮寺煌流。お前には有印私文書偽造、詐欺、そして裏社会の資金の着服……罪状を挙げればキリがない。……それと、お前が金を使い込んだ『あっちの世界の人たち』も、お前が出てくるのを手ぐすね引いて待っているよ」
刑事の言葉に、俺の背筋に氷を押し当てられたような寒気が走った。
警察に捕まるのはまだいい。だが、裏社会の金を使い込み、それを失ったとなれば、刑務所から出た後に待っているのは、想像を絶する拷問と死だ。
「……澄香は。月詠澄香はどうなった」
俺は掠れた声で尋ねた。せめて、自分と一緒に地獄に落ちたはずの女の不幸を確認したかった。
「彼女か。……彼女も共犯として立件される。だが、彼女はそれ以上に精神を病んでいるようだ。自分が捨てた男が、実は自分を救える唯一の億万長者だったと知ってな。今は拘置所でずっと、一之瀬の名前を呼び続けているよ」
俺は乾いた笑い声を上げた。
皮肉なものだ。俺も、澄香も、一之瀬呀という男を「利用しやすい踏み台」だと侮っていた。だが、実際に踏み台にされていたのは、俺たちの方だったのだ。
数ヶ月後。
俺は一畳半の独房の中で、冷たいコンクリートの壁を見つめていた。
かつて身につけていたイタリア製のスーツは囚人服に変わり、手元にはマッカランのグラスではなく、プラスチックのコップに入った冷めた水しかない。
窓から見えるわずかな空の光が、俺の過去の栄光を嘲笑っているようだった。
俺はすべてを失った。
社会的地位、金、そして自分自身のアイデンティティ。俺という人間は、神宮寺煌流という名前さえ、一之瀬呀に与えられた「破滅するための役名」だったのではないかという錯覚に陥る。
「……クソっ、クソおおおおおおお!!」
俺は壁を叩き、咆哮した。だが、その声に応える者は誰もいない。
俺にはもう、未来も、過去もない。あるのは、これから始まる長い長い刑期と、その後に待っている、裏社会の人間たちによる「清算」への恐怖だけだ。
一方、澄香は、別の施設で廃人のように過ごしているという。
彼女は今でも、一之瀬呀に愛されている自分という妄想の中に閉じこもっているらしい。それが彼女にとっての唯一の救いであり、最大の地獄だ。
俺は思い出す。
あの日、銀座の街を澄香と歩いていた時のことを。
あの時、俺は間違いなく「世界の王」になった気分だった。
だが、その視線の先で、安っぽい服を着て俺たちを眺めていた一之瀬呀の瞳。
あの、感情の読み取れない、死んだ魚のような瞳の中に、すでに俺の死刑宣告は書かれていたのだ。
「……あぁ、ごめん。その席、もう埋まってるんだ」
最後に聞いた、一之瀬の冷酷な声が耳の奥でリフレインする。
彼が琥珀という新しいパートナーを連れて、俺と澄香の横を通り過ぎていったあの瞬間。俺は確かに、この世で最も「無価値な人間」になったのだと悟った。
俺は震える手で自分の顔を覆った。
鏡がないから、今の自分がどんな顔をしているのか分からない。
だが、きっと、かつて俺が嘲笑っていた「負け犬」よりも、ずっと無様で、惨めな顔をしているに違いない。
「……やり直したい……。もう一度だけ、あの日から……」
俺の口から漏れたのは、澄香と同じ、無意味な救済への祈りだった。
もちろん、その声が届くことはない。
俺が奪い、踏みにじってきた女性たちの涙が、今の俺の絶望となって降り注いでいるだけだ。
これが、偽りの王の末路。
これが、愛を金と虚栄心に変えた男にふさわしい、完璧な因果応報だ。
外では、冷たい雨が降り始めたようだ。
その音は、まるで俺の人生という名の舞台が終わり、幕が下りるのを告げる、非情な拍手のようにも聞こえた。
俺はただ、暗闇の中で膝を抱え、震えることしかできなかった。
一之瀬呀という本物の怪物が作り上げた、この「絶望の檻」の中で、死ぬよりも苦しい時間を永遠に過ごし続ける。
神宮寺煌流としての俺の物語は、ここで完全に幕を閉じたのだ。
残されたのは、名前すら失い、過去を悔いることさえ許されない、空っぽの肉体だけだった。
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