Ace Digger ~穴掘り名人 エースディッガー~

niHONno

【序章】砂場の奇跡


子供の頃、泥んこになって土遊びをしたことはあるかい?


公園の砂場や、神社の裏手。 みんなで大きな山を作って、両側からせっせとトンネルを掘り進めるんだ。


見えない向こう側にいる誰かを感じながら、泥だらけの手で掘り進む。 あと少し、あと少し……。 そして、ある瞬間。


暗闇の中で、自分の指先が、向こうから来た指先と「コツン」と触れ合う。


「あ、つながった!」


壁がなくなった瞬間の、あの爆発するような興奮。 指先から伝わる、相手の体温。 もしそれが、気になっていたあの子の手だったなら……心臓が飛び出るほどドキドキしたはずだ。


ただ穴がつながっただけ。 なのに、まるで世界で一番幸せな奇跡が起きたような気がした。


……大人になると、人はそんな単純な喜びを忘れちまう。 だが、あの日の「ドキドキ」を忘れず、 「俺は絶対に、穴を掘って人を幸せにするんだ」 そう心に誓った、一人の男がいた。


これは、この世界に実在する稀代の職業。 黄色いヘルメットに腹巻姿、スコップ一本で奇跡を起こす男。


その名も――『穴掘り名人(エースディッガー)』の物語である。

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