LINE交換しよ。

相対度数

久しぶり。元気にしてた?

小学校の鬼ごっこを思い出していた。無限に広がる校庭は年を重ねるにつれ小さくなった。走っても走っても端っこに届きそうにない広さが、今なら30秒もかからずに到達できる。


…そんな鬼ごっこを遊んでいた友達は一体何処へ行ったのか、ふと気になるようになった。


私は今、大学生となって、中学・高校・大学と友達を作り、今でも連絡を取り合っている。勿論小学校の友達もだ。


しかし、それは中学校も一緒だった友達である。

小学校だけで終わった友達とは連絡を取り合っていない。いや、取り合うことすらできないのだ。



2011年6月23日、LINEヤフー株式会社がメールアプリ、LINEを開発した。

開発経緯は東日本大震災における簡単な連絡手段を得られるようにするためだ。


そんな便利であったLINEであるが、LINEというのはスマートフォンがないと出来なかった。私がスマートフォンをようやく手に入れたのは中学2年の夏である。これまでは友達のインターホンを押して行(言)っていたから、今思えば大変だったと思う。

私はスマートフォンを手に入れた瞬間片っ端から友達にLINEを交換した。小学校からの仲の奴、新たに友になった奴、よく知らないけどまあ…交換しようと思った奴と様々いた。

でも、小学校からどこかへ行ってしまった友は交換できない。

今や未来なら軌道修正することができるが、過去はどう足掻いてもできない。私は今とても後悔している。電話番号だけでも聞けばよかったとひどくひどく。





友と出会ったのは小学2年生の頃。前の仲が良かったクラスの友達が全員別のクラスへ行ってしまい、私は一人ぼっちとなった。この時の私は人と話すことが苦手な人間であった。良く言えばシャイ、悪く言えば陰の人間である。1年生の頃は相手から話しかけて来たので比較的友達になりやすかった。しかし私の2年生のクラスはある程度グループがまとまっており、1年の頃から仲が良かった同士でグループとなっていた。そんな中に私は入れずに、少し一人気味となってしまった。休み時間、教室の端っこで窓の外を見て、時間を潰していく…。

そんな時に喋りかけてくれたのは友であった。

※ここからは友のことをイニシャルで『I(アイ)』と呼ぶ。


Iは私に「何をしているの?」と単純な疑問を投げかけていた。今の私がこのような状況の場で話しかけられたら恥ずかしくて赤面するが、この頃の私は恥じらいなく答えた。

「空をみているんだ。めっちゃきれいだから。」と。今思えば馬鹿みたいな返しだか、そんな私を見て彼は笑顔で言った。

「じゃあ、一緒に見ていい?」

私はそのことで一緒に空を見て、自己紹介をしたり世間話をしたりして、時間を潰した。それがきっかけで仲良くなり、よくつるむようになった。新しい友達が出来ようとも。Iのおかけで友達の作り方というのを知った気がする。仲良くなりたいのならばまずは人と話さなければいけないということ。



Iは特別学級に入っていた私より若干背の低いほっぺたが少し膨らんだ男の子だ(後、眉が細め)。夢は店員さんになることだ(何の店員さんになりたいかは不明だった)。特別学級(ひまわり学級)の用事でたまにいない時もあった。その頃の私は特別学級とはなにか分からなかったし、気にしてもいなかった。今はそれがなんなのかは分かるが、だからといって彼は普通な子だし、いい子だ。私以外にも優しくできるいい子なのだ。これだけは言いたい。


仲が良かったことは事実。学校で会いには行っていた。でも、段々と関わりが減っていく感じはしていた。新しい友達ができていき、沢山との関わりを持ったからだと思う。私は嬉しかった。沢山の友達ができ、充実した毎日を遅れた。しかし、同時に関わりきれない友もいたこと。それは悲しいことだ。




卒業式、物の分別がついてきた頃だ。

卒業式にIはいた。卒業アルバムの雪のような白い場所でお互いの名前と、感謝を書いた。私は確か、その場所に黄色い星マークを書いたと思う。

書いた後、話をしようと思ったが、お互いに別の人へ「書いて」と呼ばれたため、「元気でね」と言い別れた。


     



     ただ………それだけであった。






あれから数年が経った。

大学生となった私は電車に乗り、スマートフォンを開いた。

ああ、また殺人事件が起こってる。ああ、またコメント欄で論争が起きている。

なんでもない日であった。いつもの日常だ。

大学に行って、講義を受けて、飯を食う。本当にいつもどうりだ。大学を出る時、文化祭の片付けをしている人がいた。そういえば、来週は文化祭の成功記念でサークルの打ち上げがあったんだったな。

そのように考えながら、私は大学を出た。


駅のホームへ着いた。アナウンスや広告の声がうるさいと感じていたが、ちょっと歩くとそこにはコンビニがあった。一応昼食は食べたが、少し小腹が空いたと思い、躊躇はなく入った。


「いらっしゃいませ〜。」と客は私一人しかいない女性店員の作り声がコンビニへこだまする。私はパンコーナーに入っていき、メロンパンを手に取った。そしてのどの渇き、寒い方へ引き寄せる引力で"うっかり"ミルクティーを手に取った。私はそのままレジの方へ行った。女性店員かと思っていたが、それは違った。


「お願いします。」と私は言う。

「はい、ありがとうございます。袋はお付けいたしますか?」

男性店員の声であった。


私はなんらかの違和感を感じていた。目の前にいるのは何処かで見た顔だった。

ほっぺたが少し膨らんでいて、自分より身長が少し小さい。そして、なによりも眉が細かった。声は違っていた。しかし、声が変わった可能性も有り得る。


「あの……、」

考えるよりも私は口を開いていた。







「I……君………??」





それを口に出した後男性店員は目を開いた。

「え……もしかして、〇〇君…?」 

どうやら彼は気づいたようだ、私の存在を。

「久しぶりだねぇ、元気にしてた?」

ようやく会えたんだ。言わないと、あの言葉を。

「ねぇ………、I君。」 



「なんだい?」











「LINE交換しよ。」










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