6 先輩の部屋襲撃作戦
放課後、俺と光輝は寮のロビーに集合していた。
この学園の寮はまるでホテルのような作りをしている。ロービーには高級そうなソファーがあったり、ホテルマンが常駐していたり。建物自体も十階建てになっていて、最初は本当に寮なのかを疑ったほどだ。
ちなみに、昼食の後には妖魔知識の試験があったものの、けっこう余裕を持って回答できたと思う。多分...
まぁ、過ぎたことを気にしても仕方ないな、うん。そんなことは置いておいて...
「光輝、部屋番号は?」
「809号室、八階の角部屋をあの二人で使ってるらしい」
「....なぁ、どうやってその情報を手に入れてるんだ?」
コイツは中学でも情報屋的なことをしていたが、入学二日目でなぜ二年生の部屋番号まで特定できるのか...
「そこらへんは企業秘密だ」
昔から、光輝は情報筋について口を割ったことは一度たりとも無い。あと、こいつの異能は知っているが、確実に情報収集に使える能力ではない。マジで謎だ。
「そんな事よりさっさと行くぞ、この時間帯にあの二人は風呂に入るらしい。片方が真っ裸なうちに攻めるぞ」
....もう俺はこいつの情報収集能力について考えることをやめた。そして二人でエレベーターに乗り、そこで軽い作戦会議を始める。
「この寮は少し古いからな、全室の施錠は鍵だ。だから、もし鍵がかかってたら健人が鍵を作って開けてくれ。あと、部屋の間取りはこんな感じだ」
そう言って見せられたのは、ノートの切れ端に書かれた簡易的な見取り図のようなものだ。それによると、入り口から入ってすぐのところに風呂があり、その奥に広めのリビングが。そして、右に曲がると個人部屋があるらしい。
....マジで羨ましいな。部屋に風呂があるのもそうだが、個人部屋が本当にほしい。これさえあれば同部屋の人を気にせずに目覚まし時計掛けられるし、もう遅刻の心配も無くなるんだが。
「で、最初から置かれてるソファーとテレビの配置は入口から死角になってるから、ソファーにいる方を落として、最後に風呂場の方だ。もし個人部屋にいたら風呂場を先にボコるぞ」
言葉の節々から感じられる光輝の殺意は、今まで光輝が何回も先輩二人に騙された鬱憤をはらんでいた。丁度いい復讐の動機が見つかったことに歓喜しているようにも見える。
まぁ、普段から常識人枠として、あの二人の暴走を止めているのは他でもない光輝なのだ。理解できないこともない。もしかしたら、二人の部屋番号を仕入れられたのもその執念のお陰なのかもしれないな。
「よし、着いた」
ぽーんという子気味良い音と共に、エレベーターのドアが開いた。壁の案内によると809号室は右の方らしく、足音を立てずにドアの前まで接近して、俺たち二人は部屋の前に立つ。
光輝の情報はきちんと当たっているようで、ドアは電子ロックなどではなく鍵式のものだ。
「鍵がかかってるな。行けるか?」
「余裕だ」
ポケットのペンライトで鍵穴の中を見ると、大体の構造は把握できた。そこまで複雑な構造でも無いので、精度もそこそこで良さそう。
異能によって手元にあったペンの形を変え、プラスチック製の鍵の完成だ。壊れないよう慎重に鍵を差し込んで回転させると、カチャっと音がして扉が開いた。
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