5 昔馴染みの腐れ縁

異能評価、異能練度、戦闘技能の三つの測定が終了して、今の時刻は丁度12時を回ったところ。この学園も他の例に漏れず、きちんと昼食の時間がとられていた。


俺は自炊とかはするタイプではないので、学園の食堂に向かっている。ちなみに、今のところこのクラスで唯一の知り合いである神楽木に声をかけてみた所、彼は今朝から自分の弁当を作ってきていたらしく、食堂は利用しないらしい。


ということで、スマートバンドの案内に従って学園内を歩いていると、一際大きな建物が見えた。


スマートバンドによるとここら辺は学園の中央区であり、教員棟と食堂の二つがメインである区画らしい。高くそびえ立っている方が教員棟、二階建てくらいで横に広い建物が食堂のようで、多くの生徒が食堂の扉に向かっている。


俺もその流れに従って進んでいくと、食券機と受け取りカウンターを過ぎて、すぐに昼食を買うことができた。


ここの食堂は種類が多く、軽く見ただけで主食が50品以上、他の飲み物等も含めたら100は超えている。ただ、貧乏学生の身分なので贅沢な食選は出来ずに、結局は手軽な値段で腹にたまりそうなトンカツ定食(480円税込)を食べることにした。


「はいよ! トンカツ定食ね」


給仕のおばちゃんに券を渡して、奥から出てきた定食をトレーに乗せる。更に列に沿って進むと、とても大きな大広間に出た。


すごいな、生徒が千人は入りそうだ。と、そんなことを考えながら、適当な窓際の席についていざ実食。


うん、星4.5。


米の粒が立っていて、トンカツの衣もサクサク、噛むと油がいい具合にあふれてそこに漬け物がじわじわと刺さる。そしてトンカツを食べ終わって少し脂ぎった口内が味噌汁で口直しできると、この味噌汁も味が濃かったり水っぽかったりが無く完璧な配分で作られている。しかしソースが少し足りないような気がしたのでそこは減点だな。あとはキャベツがふわふわしていないのでもう少し切り方を工ふ...




料理の評論をしていると不意に肩を叩かれた。


振り返るとそいつは、昔からの腐れ縁かつ親友でもある男。天野光輝だった。


「げ、光輝..」


「げ、とはなんだ、俺たちは共に実力を高め合った仲だろ?」


「二人揃ってボコボコにされたの間違いだろ」


「...言うな、思い出すだけで鳥肌が立ってくる」


「まあいいや、で何か用か?」


すると、光輝は待ってましたと言わんばかりの表情を浮かべた。こういう時のこいつは、絶対に何か厄介なネタを言ってくるのだ。


「新入生バトルロワイアルって知ってるか?」


「なんだそれ」


なんとも物騒な名前だが、聞き覚えは無い。新入生? というと俺たち一年生のことだろうが... しかし、その答えはすぐに返ってきた。


「なんでも八剱学園の伝統的な新入生への洗礼で、1年生の生徒たちが北区の森林地帯の全域を使って、2時間行なわれるバトルロワイヤルらしいんだ。これの成績で校内序列戦の最初の順位も決まるとか」


「はぁ? そんなの聞いてないぞ!」


「俺もだ、たぶん先輩たちは知ってたと思うんだが...」


「絶対知ってて黙ってただろ。だって、本人も去年参加しただろうし、色々と教えといてその事だけ隠しておくとか、確信犯だし悪意あるだろ」


「あの二人なら面白そうだから黙ってました、とか平然とやるな。確固たる自信を持って言える」


脳裏によぎった現八剱学園二年生である既知の先輩二人の顔、「ドッキリ大成功~!」とか言ってくる情景が鮮明にイメージできる。通りで素直に色々学園のことを教えてくれたと今更ながら納得した。


「あの二人の部屋番号はもう押さえてる、放課後お礼参りにいこうか」


「賛成、ほかにも聞きたいことは山ほどあるし」


「よし、じゃあ放課後の5時に寮の一階ロビーで会おう」


話がまとまった頃にチャイムが鳴った。そこで時間を見ると、時刻は12時45分で授業が始まる15分前、今から行けば教室に間に合うだろう。


「んじゃ放課後また会おう」


「おう、またな」





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〇 解説コーナー

 学園の区域

学園は広大な敷地面積を持ち、中央区、北区、東区、西区、南区に分かれている。

様々な施設が種類ごとに区域分けされており、中央区は巨大食堂や職員棟、北区には演習用の森林地帯や運動場、東区には生徒校舎、西区には実習棟のほとんどが、南区には研究施設がある。

ちなみに主人公たちが利用した実習棟Aは低ランクの異能者用のものであるため、

そこまで頑丈なものではなく東区に設置されている。


〇 人物紹介

 光輝

今は、ノリの軽い性格ではあるが根は真面目で、グループ内のストッパーや常識人枠になる存在。主人公とは中学校からの知り合いで、知り合った頃は重度の中二病かつナルシストであり、自身の異能に自分の名前を付けるほどだった。しかし、例の先輩二人から受けた心労により性格が変わってしまった。

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