転生した悪役貴族の"眼帯少年"は【魔眼輪廻】と前世の知識を駆使して好感度MAXの銀髪クーデレ幼馴染み美少女勇者の専属メイドと共に死亡フラグを回避してたらいつの間にか世界の救世主扱いされていたみたいです

冰藍雷夏『旧名は雷電』

第1話 ライト・クラウディア誕生

「オギャー! オギャー!」


「旦那様。お産まれになられましたよ。元気な男の子です」


「貴方……やっと私達にも子供が産まれたわ」


「あぁ……ありがとう。イリア。本当に君は頑張った! 本当にありがとう……こんにちは僕達の可愛い子。このクラウディア家に産まれて来てくれて本当にありがとう。ライト」


 突然、知らない男の人にかかえられ。頬擦ほおずりされる。止めい! 髭がジョリジョリ当たるんじゃ。


「私の可愛い赤ちゃん。ライト・クラウディア……私の始めて産んだ赤ちゃん。こんにちは始めまして。貴方のママのイリアよ」

「オギャー………」


 ────おや? ここは何処どこだろうね? 


 ボクはさっきまで最愛の義妹から全ルートを完璧にクリアしトロフィーをコンプするまで《ゼロ・スフィア》をプレイしていた筈なんだけどさ。


 何で知らない男の人にかかえられてるんだろう? それにこのおじさん。どこかで見たことあるんだよなぁ。それにさっきはクラウディア家とか言ってたような……まさかね。


「……可笑しいぞ。さっきまであんなに大泣きしていたの筈なのに、俺と目が合うなり泣くの止めてしまったぞ。イリア」

「そんな…貴方、まさかこの子。もしかして『呪い子』として産まれて来てしまったんじゃ……」


 おっと。不味いね。いきなり泣かなくなったから疑われ始めてる。ここは泣き叫ばないといけなかった場面だ。


「オ、オギャー! オ、オギャー! オ、オギャー!」

「お、おお、何とも不自然な泣き声だが。良かった。どうやら元気みたいだぞ。イリア」

「そう……『呪い』じゃないのね……それは良かったわ……」


 ベッドに寝ていた女の人はそう言い終わると寝息を立て始めた。


「イ、イリア。し、しっかりしろ! まさかライトを産んで力を使い果たしたのか? イリア!」

「バラン様。落ち着いて下さい。イリア奥様はお眠りになっているだけでございます」

「そ、そうか。それは良かった……セレスティナよ。妻の側に居てやってくれ。俺は隣の部屋でイリアが起きるまで待機しているのでな」

「はい、旦那様。お任せ下さいませ」


 金髪に尖った耳にメイド服を着た年齢的には十代位の女の人におじさんはなだめているね。

 

 そして、メイドさんはどこからどう見てもエルフ美少女だった。


「オ、オギャー、オ、オギャー」

「フフフ。イリア奥様。本当にお疲れ様でした。このセレスティナ、我が事の様に嬉しいですわ」


 ベッドで眠るイリアとか言う女の人に優しく微笑みかける。金髪エルフメイドさん。


 ………ちょっと待って。これ何? ボクはいつからVRゴーグルを付けてこんな高度な赤ちゃんプレイをしているんだろうか?


 確か寝落ちする前は近年でもっとも人気のオープンワールド型RPGゲーム 《ゼロ・スフィア》をプレイしていた筈。


 最初は義妹に無理矢理進められてやっていたんだけど。


 あまりにも豊富すぎるシナリオ、サブシナリオ、ミッション、バトル。


 個性的なヒロイン達との恋愛ゲー並み豊富な結婚までのルート。


 それらに魅力されて大学の長期休暇もあってかは部屋から一歩も出ずにカップラーメンを食べる日が続いて……途中で意識を失ったんだっけ?


 確かあの時は口から変な泡を吹いて苦しみながら天井を見ていたような。ついでに心臓とか脳がめちゃくちゃ痛かったな。


 そして、起きてみたらオギャー! オギャー!っと新生児として産まれていたと。


 ……もしかしてボク死んで異世界転生したのか? 


 いや。待てよ。あのおじさんがバランで……ベッドにいる金髪の美女がイリアさん……そして、気品溢れる美少女エルフさんの名前がセレスティナナァァ?!


 おいおいおいおい! ボクが倒れる直前までゼロ・スフィアのゲームで新婚生活をエンジョイしていたムッツリメイドのゲームキャラ。セレスティナちゃんだと?!


「アウァー……オ、オギャー……」

「フフフ。お坊ちゃん。泣き止まれたのですか? さぁ、イリア奥様の隣でお休みしましょうね。今、執事長のクーヘンさんが旦那様をお呼びしていますから。少々、お待ち下さいね」


 なんという事でしょう。ほんの数分前までゲーム内で攻略していた筈の相手に天使の微笑みを向けられながらかかえられてるんですが……どうしてこうなった?


「可愛いらしい赤ちゃん。『呪い』ではなくて本当に良かったです」


 ───さっきから何度か聞いた『呪い』は確か《ゼロ・スフィア》のゲームの中に出てきた魔法因子に適合した子供の事だった筈。


 じゃあ。ここは本当に日本で空前の人気でロングセラーになっている本格RPGゲーム《ゼロ・スフィア》の世界という事?


 そして、ここはクラウディア家。そして、産まれた子供の名前はライト。そのライトの父親の名前はバラン。


 いや正確にはバラン・クラウディア……《ゼロ・スフィア》のゲーム世界で悪役貴族として、光の勇者と呼ばれる主人公達と何度も対峙する悪役公爵。


 そして、戦いに敗北し全てを失う悪役として破滅エンドが確定しているのがクラウディア家だ。


 そんな原因を作った全ての元凶は、これから傲慢悪童として成長していくであろう。ライト・クラウディア……つまり僕ってことだよね。


 傲慢悪童として転生したって何だよそれはよおぉ!! 破滅確定じゃないですかあぁぁ!




「…………アゥァァー」


 めちゃくちゃ暇じゃんよ。


「ライト君は本当に大人しくて良い子ね。全然、泣いたりしないわ」


 この優しそうにボクに微笑みかけている女性。黄金の様な金髪に絹糸の様な長いウェーブの髪型の美女はライト・クラウディアの母親のイリア・クラウディアさんだ。


 確か《ゼロ・スフィア》のゲーム設定では高名な錬金術師の家系であらゆる特殊な眼と莫大な魔力を有する碧眼の魔女とか呼ばれる最強各の一角って設定だったっけ?


「少し大人しすぎるじゃないか? まさか実は『呪い子』だったなんて事は……」


 あっヤバい。また疑われ始めてるし。


「オ、オギャー!オ、オ、オギャー!」

「あらあら。バランお父様がそんな事を言うから怖がちゃいましたねー、ライト。最低なお父様ね~」

「イリア。俺はそんなつもりで言ったんじゃないぞ……この子は少し落ち着き過ぎていると思っただけだ」


 そして、黒髪のイケメンにして長身のオッサンは息子ライトの父親のバラン・クラウディア。


 彼は幼少の頃から数々の戦地へとおもむき数えきれない程の功績を上げて、スフィア王国の星騎士団長に最年少でなり。ありとあらゆる魔法を使いこなす為、剣星なんて呼ばれる位に強い魔剣士の設定だったかな。


「賢い貴方に似たのかもしれないわね。ほらたまにいるでしょう? 魔力が産まれ付き高い赤ちゃんって。そういう子は産まれた時から知性が高い時があるのよ。バラン」


 そして、こんな美男美女から産まれて来たのがクラウディア家を悪役貴族として破滅へと導くライト・クラウディア。つまり僕が転生した傲慢悪童ってこと。


 成長すれば母親から受け継いだ黄金の様な金髪と、父親から受け継ぐ長身の身体の美男子として成長していき。


 それに加えて良血統の両親から莫大な魔力、頭脳、身体能力、固有能力『魔眼』等々。


 あらゆる才能を引き継いで産まれたが、その余りある才能のせいで、プライドが高くなり周囲の人を見下す傲慢悪童として殆どのゲームキャラ達から嫌われ、どのルートでも悲惨な死を遂げるのがライト・クラウディアだ。


 彼はたしか5歳の頃、《ゼロ・スフィア》の主人公と共に魔獣に襲われ、主人公をその場に置き去りに残し逃げる。


 そして、1人残された主人公は悲しみと怒りを力に変えて、ソン君の様に全身を黄金の光に包まれて光の勇者へと覚醒するんだったな。


 そして、ライト・クラウディアは主人公に殺されそうになったと。傲慢悪童を溺愛する両親に嘘をついて、主人公と対立。


 最愛の息子の為に両親は悪に手を染め始め、それが後々、明るみになってクラウディア家が没落して最後は一家揃って晒し首が一番優しいバットエンドだったっけ?


「……………」

「あら? 私達を優しく見詰めてくれているわ」

「あぁ、きっとこの子は真っ直ぐで素直な良い子に育つぞ」


 いえ、バランお父様。貴方の子は自分のあまる才能にあぐらをかいて、何の努力もしなくなる傲慢不遜のプライドの塊、立派な傲慢悪童に成長していきますよ。


 そして、クラウディア家はライト君のせいで滅びます。


 いや待てえぇ! それってボクが死ぬってことじゃないかぁ。嫌だ。何で主人公の魅力を引き出す為の舞台装置として産まれて、最後は悲惨に死ななくちゃいけないだよ。


 それにこんなに優しそうな両親が、傲慢悪童の為に悲しい最後を迎えるなんてあって良いわけがない。


 だからボクはその運命から全力であらがおうと思う。転生したのに死ぬが確定しているなんてそんなのあんまりじゃないか。


 それにボクは《ゼロ・スフィア》のあらゆる隠しルートまでフルコンプしたガチプレイヤー、原作設定資料集だって買って、数十回読んで全て暗記したくらいだしね。


 こんなゼロ・スフィアガチ勢にしてくれた義妹には感謝しよう。


 そして、そんな設定資料集の中には勿論、僕が転生してしまったライト・グラウディアの設定や能力も書かれていたんだけだ……ライト・グラウディアはまさに万能の天才だった。


 魔法、剣技、智慧、等々。あらゆる分野でも成功するスペックを持っているけど。


 傲慢過ぎるその性格が災いして、誰の話も言う事も聞かず。勝手に物事を解釈かいしゃくして、勝手に自爆するアホの子でもあるんだ。


 ────そんなライト・グラウディアは実はゼロ・スフィアのゲーム世界で最も貴重な特殊な力を持っているんだ。


 それが彼専用の固有能力『魔眼』。母親イリアから受け継いだ『慧眼の力』と父親バランの『浄眼じょうがん』の固有因子が交わる事で、あらゆる『眼』の力が使える様になる。そして、莫大な魔力も───


「アゥアー……」


 そして、今のボクは意志がある赤ん坊。


 時間ならたっぷりある。なら固有能力『魔眼』を鍛えるなら今しかないよね?


 たしかライト・グラウディアはあらゆる努力をおこたり、自身の才能や「魔眼」にある事すら気づかず成長して傲慢になっていく。


 でもボクは違う。この世界が全ては強力な数値で決まる事を知っている。


 ならば時間のある幼少期に全てを極めようじゃないか。


 そして、確定バットエンドが始まる光の勇者との決別ルートに出てくる敵を倒して、決別ルートを無かった事にすればボクも優しい両親も生き残れる筈だ。


「アゥーー」プリっ!


 そして、ボクはやる気を出す為に気合いのお叫びを上げた事で……


「あら? ライト。やっちゃったわね」

「臭うな……」


 ウンコを漏らした。



「……………」


 朝は8時だよ。全員集合で家族全員揃っていたのに、イリアバランも公務の仕事が貯まってるとかで出てってしまった。


 メイドのセレスティナも屋敷での仕事。そして、ボクのお世話は50歳位のイケオジ。執事長クーヘンがしてくれるとの事なんだけど……


「御坊っちゃま。御初に御目にかかります。クーヘンで御座います」


 たしかこのクーヘンさん。設定資料集では、スフィア王国の剣星の中で歴代最強と言われたっていう隠し設定があるだよね。


 本当の歳もたしか200歳は軽く越えてて、固有能力『老化止め』で自身の老化を遅らせているとか書いてあったっけ? 


 それを周囲は全く知らない。そんな彼が傲慢悪役公爵となったクラウディア家を裏切って斬殺していく事も───


「ほう。素晴らしい眼を御持ちの様ですね……」

「ウァー」

「………ライト様。貴方はまさか? いえ……こんな憶測で物事を言ってはいけませんな。では私はお隣の部屋で事務仕事をしていますので何か御座いましたらお呼び下さい」


 ガチャッ……!


 あの人絶対に何か気づいてるよね? 


 それにクーヘンさんから殺意みたいなのが飛んで来たんだけど。ライト君の身体に転生した僕についてもしかして気づいてる?


 あり得ない話じゃないか。あの人は『ゼロ・スフィア』でも特別な存在の1人。それよりもやっと1人になれたし。


 色々と確認しようかな。それじゃあお待ちかねのライト・グラウディアのステータスオープン。


ライト・グラウディア

種族・人間

レベル1

筋力1 

魔力10000

知力100

体力1

運 100

スキル 無し

称号 漏らしの初心者

固有能力『魔眼』


 ………なんで漏らしただけで称号が手に入っているんだい? 意味が分からないんだけど。


 いやいや、今はそんな事よりもステータス画面に写し出された魔力と『魔眼』だ。


 流石、あの高スペック両親から産まれたハイスペック遺伝子。


 産まれた瞬間にこんな魔力量と特殊能力を保有してるなんてね。こんな素晴らしい力を持っているくせに努力もせずに傲慢な性格になっていくなんて本当に勿体ないね才能だね。


 まぁ、これから先、あの両親に溺愛され過ぎてアホの子になっていくんだから仕方ないけどさ。


 でも安心してほしいボクはそんな傲慢な性格にはならない。なんせこれから必死に努力するからね。


 しかし、今の段階だと赤ちゃんの身体の為、手、足はまだまだ使えない。片眼の固有能力『魔眼』は使えるみたいだしそろそろ始めようかな。


 あらゆる眼の力を手に入れる為の特訓を───



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最後まで読んで頂きありがとうございます。

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