車椅子と片麻痺と同棲と

@etsuko256

お団子

夕方、帰ってきた彼がコンビニの小さな袋をそっとテーブルに置いた。

中には、あん団子。スーパーのより少し細身で、パックの端がやわらかい。


「これ、開けやすいかなって思ってさ。」

彼はそう言うと、指先でパチンと簡単に封を浮かせてみせた。


「いつもさ、無理に力入れてる音がするから。」

彼が笑う。

彼女は、なんでもない顔で「そう?」と返したけれど、胸の奥にゆっくりあたたかいものが広がる。


彼は横に座り、パックの蓋を開けきらず、少しだけ隙間を残して渡した。

「これくらいなら、自分で開けた感じになるでしょ。」


「……ずるいわね、そういうの。」

そう言いながらも、彼女の頬はゆるんでしまう。


団子はつやっとしていて、ほどよい甘さ。

窓の外はもう暗く、部屋にはふたりの噛む音だけが静かに並んでいた。

その静けさが、なぜかとても心地よかった。

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