車椅子と片麻痺と同棲と
@etsuko256
お団子
夕方、帰ってきた彼がコンビニの小さな袋をそっとテーブルに置いた。
中には、あん団子。スーパーのより少し細身で、パックの端がやわらかい。
「これ、開けやすいかなって思ってさ。」
彼はそう言うと、指先でパチンと簡単に封を浮かせてみせた。
「いつもさ、無理に力入れてる音がするから。」
彼が笑う。
彼女は、なんでもない顔で「そう?」と返したけれど、胸の奥にゆっくりあたたかいものが広がる。
彼は横に座り、パックの蓋を開けきらず、少しだけ隙間を残して渡した。
「これくらいなら、自分で開けた感じになるでしょ。」
「……ずるいわね、そういうの。」
そう言いながらも、彼女の頬はゆるんでしまう。
団子はつやっとしていて、ほどよい甘さ。
窓の外はもう暗く、部屋にはふたりの噛む音だけが静かに並んでいた。
その静けさが、なぜかとても心地よかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます