第6章:いつも分け合うお弁当

イズミは笑いをこらえ、顔を隠すナツメの反応に満足していた。授業は続いていたが、二人の間の空気は静かな温かさに変わっていた。窓から入る朝風はより涼しく感じられ、時間はゆっくりと流れ、ついに…


昼休みのベルが鳴り、お昼の時間を知らせた。まだ座っていたナツメは、そっと本を片づけてから立ち上がった。


「 いつもの場所へ行こう。 」彼女は短く言った、さっきのノートでの小さな会話などなかったかのように。


イズミはちらりと彼女を見て、それから気楽に肩をすくめた。


「ついてくよ、でもまず食堂に寄る。」


ナツメは足を止めた。


「 またお弁当持ってきてないの? 」


イズミは首を振った。


「面倒くさいんだ。」


ナツメはため息をついた。そのまま行こうとしたが、結局「 わかった。 」と呟き、イズミに従った。


食堂はもう賑わっていた。イズミは気楽にパンと飲み物を取ってレジへ向かった。ナツメは彼の隣に立ち、列をちらりと見た。


「 こうなるってわかってるなら、なんでお弁当持ってこないの? 」ナツメは呟いた。


イズミが支払いを済ませ、外へ歩きながら答えた。


「お前が待ってるってわかってるからだよ。」


ナツメは一瞬黙り、頬が少し熱くなった。慌てて顔をそむけた。


「 もう… 」彼女は呟き、すぐに追いついた。


二人はいつもの場所へ向かった―校舎の裏の大きな木の下にあるベンチだ。そこは静かだった。そよ風が優しく吹き、木の葉を揺らしている。


ナツメが先に座り、弁当箱を開けた。イズミは隣に座り、パンの包みを開いた。


静かな空気、ただ風の音と遠くの鳥のさえずりだけが響く。しかし、それで十分に居心地が良かった。


ナツメはパンだけを食べているイズミをちらりと見て、そっとため息をついた。落ち着いた動きで、予備の箸を取り、少しだけおかずをイズミの方へ差し出した。


「 食べる? 」彼女は言いながら、自分の弁当に集中しているふりをした。


イズミは振り返り、差し出された唐揚げを一目見た。口元がほのかに上がり、それから少し口を開けた。


「勧めてくれるなら、断らないよ。」


ナツメは一瞬止まり、それから素早く箸を引き戻した。


「 自分で食べなさい。 」彼女はぶつぶつ言い、その唐揚げを弁当箱の蓋の上に置いた。


イズミはくすくす笑い、それから自分の手でその唐揚げをつまみ取った。


「ありがと、ナツメちゃん~」


ナツメは睨みつけ、頬がほんのり赤くなった。


「 そんな呼び方しないで。 」彼女は文句を言い、それから急いでご飯を口に運んだ。


しかしイズミはますます楽しんでいた。


「なんで?俺にお弁当分けてくれるくらい優しいじゃん。」


ナツメはふんと言った。


「 お腹すかせて倒れるのを見たくないだけ。 」彼女はぶっきらぼうに言った。


イズミは満足そうに唐揚げをかじった。


「じゃあ、俺のこと気にかけてくれてるんだな。」


ナツメは深くため息をついた。


「 気にかけてるとかどうとか、次は自分でお弁当持ってきなさい。 」彼女は言った、心の中ではその可能性が低いとわかっていながら。


イズミは飲み込んだ。


「最初からそのつもりはなかったんだ。」


ナツメは鋭く彼を見つめ、それから諦めたようにため息をついた。


「 じゃあ、最初から私に依存してるって言えばいいのに。 」彼女は皮肉っぽく言った。


イズミは背中を木の幹にもたれかけ、一瞬空を見上げてからナツメに戻った。


「言う必要ある?」彼はほのかに微笑んだ。「お前、もうわかってるだろ?」


ナツメはむせそうになった。慌てて飲み物を一口飲み、頬が赤くなった。


「 イズミ! 」彼女は小声で抗議した。


イズミはただくすくす笑い、彼女の反応を楽しんだ。


ナツメは文句を言いながらも、いつも通りにお弁当を分け合った。そしてイズミは文句も言わずにそれを受け取った。彼らにとって、それだけで全てを証明していた。


木の下で、静かな空気の中、彼らは小さな習慣を続けていた―文句を言い合いながら、それでも一緒にいるという。


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