第2話 はや! ってちょっと待て! せめてこれ外してから帰ってくれ!
「新入部員ができた事ですし、自己紹介をしましょう。年功序列で私から行きますね」
ピンク髪の女性の一言で自己紹介の流れができた。誠之にとってはありがたい話だった。これを機にちゃんと部員を観察しようと考えた。少しでも知ってこの危ない連中から身を守ろうと思った。
「私は、
桃子は身長は140cmに届いていない小学生のような体格で声も幼く童顔も相まって小学生と言われても違和感がない。ピンク色の髪で幼さの残るショートヘアで、目の色は紫がかったピンク色で大きく丸い。そして嘘を見抜く超能力を持っている。
「じゃ次は私ね」
「ちょっと待て! 」
聞き逃せない単語が聞こえたので会話にストップをかける。それに対して赤髪の少女は苛立ちを隠そうともせず眉間に皺を寄せた。
「今度は何? 」
「今超能力って聞こえたんだが」
「そう。で? 」
「で? じゃねえよ! 重要なことだろ!? 」
赤髪の少女はため息を一つこぼす。
「アンタは人を超能力を持ってるかいないかで判断するの? 小ちゃい男ねぇ」
赤髪の少女は呆れたようにもう一度先ほどより長めにため息をついた。
「ぐっ。……遮って悪かった。続けてくれ」
誠之は超能力のことをちゃんと聞きたかったが、赤髪の少女の言う通り超能力の有無で人は変わらないので一旦受け入れることにした。ちゃんと中身を見てくれない辛さは誠之自身わかるつもりだった。
「私は
彩葉は少し紫みを帯びた鮮やかな赤髪をサイドポニーにしている。キリッとした目で色は緋色。どこか威圧的なオーラを感じる。身長は160cmくらいのスラリとしたスレンダーな体型な少女。超能力は探し物に特化しているらしく便利な能力だと誠之は思った。
「私は
瑠香は立ち上がって段差の前まで来る。
容姿は少し緑がかった明るい黄色の髪を腰まで伸ばしているストレートヘアで、前髪にはヘヤピンを左側に二つつけている。くすんだ赤みがかった黄色の目をしていて目つきは鋭い。しかし威圧感は不思議となかった。平均的な身長で華奢な体格をしている。超能力は物々交換みたいな能力。これも便利だと思った。
「特別に見せてあげるわ」
瑠香は髪を片手で払った後、右手を前に出した。
「はっ! 」
掛け声と共に瑠香の手に唐突にパッと猫のぬいぐるみが現れた。前触れなくいきなりだったため誠之は目を見開いて驚いた。その様子に瑠香はドヤ顔で胸を張った。だが瑠香の顔がみるみると赤くなっていく。心配した誠之が声をかける。
「おい、大丈夫か? 」
「大丈夫よ! なんの問題もないわ! 」
瑠香は声を震わせながら答えた。
誠之には瑠香が虚勢を張っているように見えた。顔はりんごのように赤く、声は震えてる。加えて瑠香の左手はスカートを強く握りしめている。このことから誠之は瑠香がトイレを我慢しているのではないかと考えた。
「ちょっと用事ができたから少し席を外すわ! 」
瑠香はぬいぐるみを机に置いたのち、バックを持って部屋から出て行った。その際しきりにスカートを気にしていた。
「見栄を張ってバックを持たずに能力を使うから」
彩葉は「はぁ」とため息をついて肩をすくめ、やれやれとジェスチャーをする。誠之はその言葉と様子に疑問を持った。
「どういうことだ? 」
「あの子の能力は身近な物と欲しいものを交換するの。その時身近なものはランダムで選ばれるのよ。だからあの子、いつもいっぱい入った鞄を持ち歩いてるんだけど、調子に乗って鞄を持たずに能力使ったから身につけてる物を持ってかれたのよ。あの様子だと多分パンツね」
パンと音がする。
「さ、気を取り直し行きましょう。次は白府さんお願いします」
瑠香を心配する者がいないことから彼女の部での扱いを大体察した誠之であった。
「……
想葉は誠之相手にここまで一言も話さず時折チラチラ見てくる少女であった。白い髪のロングヘアーで、目は澄んだ水のような薄い青色。睨んでるようにも眠そうにも見える目から想葉の心を読むことはできない。身長は座っていて正確には分からないがかなり小柄。超能力は心が読めるとのことで誠之は自分の心が今も読まれているのか気になった。
「次は私の番ですね。私は一年F組の
凪咲は髪を後ろで一つに束ねて腰まで流している。巫女さんの髪型に似ている。紫紺の色の目で輪郭は丸く少し目尻が垂れている。平均より少し下ぐらいの身長ですらりとした華奢な体格。第一印象は清楚だったが、少し話しただけで面白い女という印象に変わっていた。超能力は強運。
誠之は今までの情報をまとめる。ここの部には誠之を除くと女子生徒しかおらず少女達は皆容姿が優れ、超能力を持つ目的のためなら手段を選ばない野蛮な集団だということが分かった。
「最後は俺か。二年B組、
――――キンコンカンコン
最終下校時刻を知らせる鐘の音がなった。
「んじゃ帰りましょ」
彩葉の掛け声で各々帰り支度をする。誠之は周りを見渡して自分の鞄を探した。床の間に置いてあった。取りに行こうと立ち上がり、ジャラという音と共に歩く。歩きにくさと音に違和感を感じて視線を下にやると足枷がついていた。誠之は足枷のことをすっかり忘れていた。
足枷を外してもらおうと振り向いたら、もうすでに皆部屋から出ようとしているところだった。
「はや! ってちょっと待て! せめてこれ外してから帰ってくれ! 」
「足枷の鍵は瑠香が持ってるのよね。悪いけど瑠香が帰ってくるまで待ってあげて。じゃ」
ピシャっと無慈悲な音と共に彩葉達は帰って行った。誠之は絶望感に打ちひしがれる。
「早く帰ってくるといいですね」
「先生はいてくれんのか! 」
心細かった誠之の心に一筋の光が訪れた。
「部室の施錠をしないと行けませんから。ただ後10分で戻ってこなければ足枷をしたままでも帰ってもらいます」
「それでも助かるぜ」
誠之は瑠香を待つ間、桃子と話をしながら待った。しかし、10分経っても瑠香はこず足枷をしたまま帰る羽目になった。
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