路上占い、あれこれ111【占い師は求める】

崔 梨遙(再)

単品、寝る前の1杯、988文字です。

 いろいろな方々から、聞いてきた言葉がある。


 “俺は(私は)生きてきた証が欲しい!”


 その言葉を聞く度に思っていた。


 “羨ましい”


 僕はそのレベルまで達していない。僕は生きていく資格が欲しい。


 僕は兄姉とは腹違いだ。


 父と母が再婚同士、母に子は無く、兄姉は父の連れ子だ。そして僕が生まれた。


 兄姉からすれば、僕が妬ましかったのだろう。


 自分達は血の繋がらない母親に気を遣っているのに、僕だけ本当の両親に育てられている。


 結果、幼少期など、兄姉と留守番をしている時に僕はいじめられ続けた。


 「お前なんか、いなければ良かったのに!」


 「お前がいるからアカンねん!」


 「お前なんかいなくなったらええねん!」


 「お前なんか、生まれてこなければよかったんや!」


 やがて僕は思うようになった。


 “僕は生きていていいのだろうか?”


 “僕は生きていたらダメなのではないか?”


 誰かに言ってほしかった。


 「生きていてもいいよ」


 ちなみに


 僕は留守番の時にいじめられても、両親には何も言わなかった。


 首から下を、姉には爪でつねられまくっていたけれど。


 なんとなく、兄も姉もツライのだろうなぁと思っていたから。


 なんとなく、“僕が言わなければ丸く収まる”と思っていたから。


 何故だろう?


 僕の我慢で憎しみの連鎖が止まればいいと思っていた。


 まだ子供だったのに。そう思えた。


 不思議と、兄姉を恨むことは無かった。


 でも、幼少期の体験は僕の心の根っこの部分に影響を及ぼし続けている。


 “僕は生きていてもいいのだろうか?”


 だから、僕は人の役に立つことが好きだ。


 人助けをしていると、


 “僕はこの人を助けているから、生きていてもいいよね?”


 と思えるから。


 だから、こんな人生になったのかもしれないけれど。


 それは、僕の恋愛にも影響を及ぼし続けている。恋愛以外にも。


 “俺(私)は生きてきた証が欲しい!”


 素晴らしい!


 そう言う人達は、既に“自分は生きていてもいい”と思うことが出来ている。


 既に生きていく資格、生きる資格を持っている人達だ。


 僕は証を求める手前の段階で止まっている。


 まず、生きる資格が欲しい。生きていく資格が欲しい。


 ずっとそれを求め続けている。


 誰に願えば与えてくれるのだろうか?


 “僕は生きていてもいいのだろうか? 


  僕は生きることを許されているのだろうか?” 


  誰が答えてくれるのだろう? 誰が資格を与えてくれるのだろう?


 その疑問は今も常に心の奥に。僕は生きる資格を求め続ける。




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路上占い、あれこれ111【占い師は求める】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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