第2話【騒がしいホラゲー配信】

「じゃあ今日は皆に教えてもらったバックルームってホラーゲームをするね。でもこのゲームスタート画面から怖いんだけど。スタート押したくない!」


 確かに小春にとってはこのスタート画面は相当怖く感じるんだろうな。

 音楽も不穏な音だし背景は一面汚れた黄色の壁の部屋。時々明かりが点滅しているのもポイントが高い。


「本当に乃愛は怖いの無理だよな。小さい頃にお化け屋敷に雫月と一緒に行ったんだけどね、乃愛マジで泣きながらめっちゃ強い力で俺の腕掴んで離さなかったんだよね」

「ちょ、ちょっとなんでそんな事言うの! 恥ずかしいじゃん!」


 小春はあの時の様に俺の腕を掴みぶんぶん振ってきた。


:可愛すぎる

:尊いのやめてください

:惚気てないで早くプレイしてください。


「ごめんごめん。ついあの時の事思い出しちゃって」

「だからって皆に言わないでよ! 絶対ネタにされるんだから!」


:¥3000 勿論切り抜いて総集編としてアップします。

:また新たに可愛い乃愛ちゃんのエピソードが増えたな。

:ソラくんもっと乃愛ちゃんのエピソード頂戴。


「ほらー! こうなるんだから!」

「はいはい、ゲーム始めるよ」

「ちょっと! 勝手にスタート押さないでよ! 始まっちゃったじゃん!」

「始めるんだよ!」


 バックルームは様々な不気味な部屋を脱出していくゲームだ。最初の部屋は警戒レベル1で次の部屋はレベル2と難易度が上がっていく。

 部屋を出るには鍵が必要でどこかに隠されているのだが、部屋には怪異や様々なギミックがあり簡単にはいかない。

 

「これどうすれば良いの? なんか目の前に鍵があるけど取ればいいんだよね……」


 そう言って小春は目の前に落ちてる鍵を手にした。

 最初の部屋、レベル1は最初から鍵を手にした状態で怪異から逃げながら脱出の扉を探せばいい。


「ちょっとソラ! どうすれば良いの⁉ ゲーム閉じれば良いの⁉」

「なわけないだろ! 脱出の扉を探すんだよ」


 小春はもうやめたいと細い声で言いながらもゆっくりと前へ進んだ。

 

:最初は簡単だから大丈夫だよ。

:何分かかるかな。


「もー、本当に嫌すぎる……」


 隣を見ると小春は半分目を閉じた状態でプレイをしていた。


「ちょっと待って……何か聞こえない? 絶対聞こえるって!」

「確かに何か聞こえるね」


 何かが歩く音が静かな部屋に響く。


「音大きくなってない? 絶対近づいて来てるってぇぇぇええ!」

「おい待て逃げるな!」


 小春はゲーム内で逃げたわけでは無く、現実世界でパソコンの前から離れて逃げ出した。

 一体何をしているのか全く理解できない。

 嫌がる小春を無理やり元の席に戻しゲームを再開させた。


「はぁ……はぁ……まだ大丈夫……? ウワァァァァ‼ なんか来てる‼ 無理無理無理‼ 痛ッ! 腕ぶつけた痛い!」


 推定三メートルはあるであろう怪異に追いつかれた小春は反射的に身体を動かし机に腕をぶつけた。


:大丈夫かww

:耳壊れた。

:騒がしすぎるwww


「も―何あいつ! なんで追いかけて来るのキモすぎ! 早く死んで!」

「おーい、お口が悪いですよお嬢さん」


:キレないでもらって。

:なにもなかったらホラーゲームじゃないだろw


 怪異に捕まり最初の場所に戻って来た。


「ねぇ、この部屋クリアしたら配信終わっても良い……?」

「早すぎだろ。レベル1だぞ。せめて3か4くらいまでは行こうよ」

「もー嫌すぎる! なんで乃愛がこんなこと……」

「でもやらないと終われないよ」


 そう言うと渋々キーボードに手を置き再びプレイを再開した。

 結構部屋を歩き回っているが、運が良いのかまだ怪異には出会わない。

 けれど少しだけ足音が聞こえてきた。


「なんかFキーを押すと何かあるらしいよ」

「え? Fキー?」


 小春がFキーを押すとゲーム内で口笛のような音が響いた。


「ちょ、ちょっとソラ……? これって……」

「あー、なんかFキーは怪異を呼びつける時に使うらしい」

「それをもっと早く言って馬鹿‼」


:確信犯だな。

:ソラくんナイスすぎる!


 すると足音はどんどんと大きくなってきた。


「あーもうやだやだやだやだ! もういやぁぁぁぁぁあああああああああ‼」

「ちょ……く、苦しいって……」


俺は小春に思いっきり首元に抱き着かれ呼吸が苦しくなり何度も小春の背中を叩いているがそんな事お構いなしに力強く抱きしめてきた。

このままでは俺も幽霊になって小春の前に表れることになってしまうとできる限りの力を振り絞り引き剥がした。


「はぁ……はぁ……呼吸ができるって素晴らしいな」


:一体何があったんだよ。


「いきなり首元に抱き着かれて呼吸ができなくて」


:抱き着かれた⁉

:羨ましい!

:おい乃愛そこ変われ。


「ちょっと! そこはソラ変われでしょ!」


 涙声になりながらもコメントに反応する小春は震えた指で今も俺の腕を掴んでいる。


「コメントに反応できるならまだ余裕だな」

「そんなわけないでしょ馬鹿なの⁉」


:言葉が強いぞ言葉が。

:多分ソラ君のが何倍も頭良いぞ。


「そう言う事じゃない!」




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人気VTuberの幼馴染にお願いされて一緒に配信をしたら大人気VTuber達に話題にされた 月姫乃 映月 @Eru_ZC

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