第2話 雨宿りの夜に〜責任の回廊〜

 次に目を開けた時、彼女は巨大な回廊の中にいた。


 高い天井。

 どこまでも続く扉。

 そのすべてに、結衣が過去に言われた言葉が刻まれている。


《あなたならできるよ》


《頼りにしてるから》


《間違えるはずないよね?》


 胸が締めつけられた。

(……全部、私を縛ってきた言葉だ)


「ここは“責任の回廊”。結衣さんの心が作った世界です」

 気づくと隣に澪がいた。


「そんな名前、つけた覚えないんだけど……」

「心って、本人より先に本音を見つけることが多いんです」

 結衣は乾いた笑いを漏らした。


「……私、そんなに追い詰められてたのかな」

 澪は小さく頷いた。

「結衣さんは、“優しい人”だから。人に期待されると応えたくなるし……人が困っていると放っておけない」

「……放っておけなくて、勝手に背負って……

 結局、全部中途半端になって……」

 澪はゆっくり、結衣の手を握った。


「……一緒に、行きましょう。結衣さんの心の一番奥にある、“本当の声”を探しに」

 結衣は小さく頷き、回廊の奥へ歩き出した。

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