しゃぶしゃぶと肉を泳がす鍋奉行

オタク、闇鍋ははじめてかい?


声のトーンが少しはソフトになったようだ


まあ、この闇鍋の席にいるってことは

それなりのお人なんだろうと思うが


鍋のぐつぐついう音が大きくなった


具材に火が通って食べ頃になったのだろうか


しかし


おかしい


???


火力のようだと思っていたが、炎がないのだ


???


漆黒の闇の中に炎の明るさがあって然るべきだが、それすらない


オタク


おかしいと気がついたね


オタクにとっては闇鍋だが、


そんなコターない


オタクの目が見えないだけなのさ


闇鍋でもなんでもないのさ


何も話してくれないと、

しようがないな、


ぐつぐつ、ぐつぐつ、ぐつぐつ、、、


ここの規則で

オタクを具にしなくちゃならないのさ


そう一言聞こえたかと思うと


何者か、いや、巨大な手のようなものに自分の体は鷲掴みにされた


!!!


悲鳴を上げようにも上がらない


くぐもった唸り声だけが自分の口から発せられるだけだ


!!!


自分の舌が無いことに今更気がつく


眼は、


どうやら眼球がないのだ


ヒトは、激痛のビークを超えると脳内ホルモンから神経を麻痺させるモルヒネのような物質が出るらしい、それで今まで平静にいられたのか


しかし、身体の異変に気がついた途端に

今まで味わったことのないような激痛が

全身を駆け巡った


グェェェ、、、


どうやら耳も引きちぎられているらしい


手足もない


身体を失うと


ヒトは五感も働かないし、脳も鈍くなる


そのまま


自分の肉体が空中に踊ったかと感じると


重力で、、、落ちて行く、、、それにしてもなんと巨大な鍋なのか!


鍋の中に落とされる!


そうか、最後の記憶は死刑囚として死刑台に上がった場面だ

私は殺人の罪で絞首刑に処せられたはずだ

まさか二度死ぬなんて、、、


ぐつぐつ、ぐつぐつ、ぐつぐつ、、、、


巨大な手から放り出された


身体が重力に従って中の中を落ちて行く


なんて長いのか、これも苦しませるためか、


ようやく死ねる、、、のか、、、それとも何度も繰り返すのか、、、


ボチャッ!ザブーン!!!グェ!


ぐつぐつ、ぐつぐつ、ぐつぐつ、、、、


了(fin.)

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俳句と散文 「鍋」 よひら @Kaku46Taro

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