さぁ、行こう
義妹たちを岩屋の下に置いて帰った自宅にて。取り敢えず一人にしてほしいとエマには頼んで丸上は自室に入った。
「何か色々間違ってないか?」
そして心の思うがままに呟いたのはそんな疑問だった。彼の思考は止まらない。
(こういうのって、普通寝取られる前に転生して何とかしよう的な流れにならない? 今回の転生って割と手遅れ気味じゃね? それか、敵役に転生して何か俺は悪人じゃないから改心して~みたいな感じになるのが一般的では?)
前世のWeb小説が原作の物語ではそう言った流れが主流だったはずだ。転生系物語を好んで読んでいた丸上にはそれがよく分かる。それを知っている上で今回の出来事は勝手に裏切られた気分だった。
「……はぁ。あんなに懐いていた茉莉と理沙が汚されに汚されて……って、丸上くんは絶望してたけど、割と自業自得な気もするんだよねぇ」
前人格の丸上の状況を思い出して丸上は嘆く。稀代の黒魔術師であり、ハーレムの主人公のような存在だった彼は新ヒロインやメインヒロインばかり大事にして事件を解決した過去のサブヒロインたちのことは蔑ろにしていたのだ。
(そりゃあ愛想を尽かす奴も出るだろうし、色々と裏で策謀してもう一度ヒロインの座に返り咲こうとする奴も出て来るっての……)
丸上は自己の状況を鑑みてそう思った。そして現状の整理のために黒魔術を使って自身の身の周りを調べる。岩屋たちの場所は下手に突いて何かあると嫌なのでそこを除いて、だ。
(……うわ怖っ。あんなに雑だったのに誰も愛想を尽かしてない)
しかし、今の丸上の認識は甘かった。周囲の美女、美少女に美幼女たちに至るまで丸上のことを諦めていない方が絶対多数だったのだ。
幼女まで誑かしていることについては黙っておいたとしても、入れ替わった人格にとってここまでの盲信は恐怖でしかない。
(洗脳系の黒魔術は使ってないし魅了系も使ってない。こいつら事件解決した程度でここまで入れ込むとかマジか? これ、入れ替わってるのがバレたら俺、殺されるんじゃないかな……)
一応、稀代の黒魔術師であるのでヒロインたちが総結集してもそう簡単に殺られるつもりはない。ただ、あんなに慕ってくれた彼女たちを皆殺しにするとなると精神的にヤヴァいことこの上なしだ。
(どうしよっかなぁ……取り敢えず、今回の件はぶっ潰すけど)
丸上はひとまず行動あるのみとしてパソコンの前に移動する。岩屋は遠隔で黒魔術によって殺すには少しだけ難易度が高い相手で、今回は人質がいるという問題もあるが、やりようはいくらでもある。
「さて、まずはあいつから送られたリンクから侵入だな……うわ、馬鹿だ」
リンクを踏むと丸上の知識にはないアングラサイトで義妹たちのあられもない姿が晒されている。投稿者名は適当な名前になっているが、同サイト内を検索しても二人と思わしき動画を投稿しているのはそのアカウントのみだ。
「じゃあ、順当にハッキングしていきましょうか」
相手が使うサイトは割れている。アカウント名も分かっている。そして何より丸上は稀代の黒魔術師であり、岩屋以外のところに黒魔術を使っても相手に検知されないのは先程確認済みだ。
違法動画サイトのページを開いたまま開発者ツールを開いた丸上は手早く違法行為に手を染め始めた。
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