第10話 ガンの城濁音殿潜入:怒りの核へ
半濁音の国を後にした和光は、
パルス環の柔らかな力を胸に、
濁音の国がある黒い大地へと向かった。
濁音の国――
そこは半濁音の国とは正反対、
空気が重く、
足元は音を吸い込むように沈む。
和光が一歩踏み出すごとに、
地面は「ごん…」「がん…」と低く唸った。
やがて、
巨大な黒い城が姿を現す。
濁音殿(だくおんでん) ― ガンの怒りが形になった城
城門には巨大な文字が刻まれていた。
「ガ」
「ギ」
「グ」
「ゲ」
「ゴ」
その全てが
怒り・破壊・衝突を象徴する波動として発されており、
近づくだけで身体が重くなる。
和光の胸のパルス環が
弱く鼓動した。
ポン……ポン………
半濁音の優しいリズムが、
濁音の圧力をわずかに緩めてくれる。
和光は息を整え、
城門に手を触れた。
すると――
門の内側から
低く、深く、うねる声が聞こえた。
「……おまえか。
和光。」
そう。
ガンはすでに和光が来ることを察していたのだ。
第一の
城門がゆっくりと開くと、
中には真っ赤な光を放つ部屋があった。
そこに立っていたのは、
ガの濁音を具現化した守り手。
《ガ・ゴーレム》
その身体は
怒りの炎を抱えた岩のように固く、
目は燃えるような赤。
ゴーレムは吼えた。
「ガァァアアア!!
衝突こそすべて!
止まること許されぬ!!」
和光は清音融合の光を胸に灯し、
姿勢を構えた。
前哨戦:パルス環 vs ガの衝撃
ガ・ゴーレムが拳を振り下ろした瞬間、
空間が割れるような衝撃が走る。
和光はパルス環を展開し、
ぐっと受け止めた。
柔らかな泡のような音が響く。
ポン……!
ガの破壊の衝撃が、
パルス環に吸収され、
丸く変形して消えていく。
ガ・ゴーレムは吠えた。
「なぜだ!
なぜ我が怒りが砕けぬ!?」
和光は静かに答えた。
「怒りは否定しない。
でも、暴走は流す。」
光、形、流れ、そしてパルス――
和光の清音融合は、
ガの暴力を“丸めて無害化”していた。
怒りの核が暴かれる
動揺したガ・ゴーレムの胸から、
黒い光が溢れた。
それは濁音の怒りが凝縮したもの。
破壊の根源。
その光は
和光に触れた瞬間、
一瞬で胸を締めつけた。
――痛い。
――苦しい。
――怖い。
和光は気づく。
これは“怒り”ではない。
怒りの奥にある「傷」だ。
和光の胸の清音融合が
淡く震えた。
アンの光。
インの形。
ウンの流れ。
パの鼓動。
それらが合わさり、
ガの傷にそっと触れる。
すると、
ガ・ゴーレムが苦しげな声でつぶやいた。
「……助けて……」
和光は息を呑んだ。
濁音の守護者でさえ抱えていたのは、
怒りではなく、
“怒りに隠された孤独と恐怖”
だったのだ。
和光は光を心から放った。
ガの核が溶けるように消え、
ゴーレムは静かに崩れ落ちた。
「……行け……
ガンのもとへ……
あいつも……
苦しんでいる……」
和光は深く一礼した。
次の扉が開く
ガの間の奥に
黒い階段が現れた。
その先にあるのは――
濁音の
怒りの根源そのもの。
和光は拳を握り、
静かに歩き出した。
「ガン。
君の怒りの正体を……
必ず見つける。」
闇の奥で、
ガンの気配が微かに震えた。
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