残火ーまだ終わらない戦争ー
たっちゃん
プロローグ:十年前
「ねえ、星空って綺麗だね。小さな光が集まっていて。」
銃を抱えた女ーーエリカが男に言った。夜の凍える空気は宇宙の中にいるようだった。廃れたアパートの屋上から見える街に光は残されていない。
「見たことある?宇宙から見た地球。昼は青くて、夜は街の光が星空のようだったんだって。」星空を見る女の憧れた目はだんだんと下がっていく。そして彼女は小さく笑って言った。「これじゃあ、どっちが地球か分からないね。」
地上は暴力に汚染されていた。毎日が戦いの日々……。星空を見た翌日には人が変わったかのようだった
死体と廃車の平原に一つ、家があった。そこにいる家族は互いに助け合い、僅かな物資で戦火を生き抜こうとしていた。「お父さん!いっぱい拾ってきてね!食べ物!」まだ幼い少女が言った。母親も自作コンロで簡易スープを作っていた。「気をつけてね〜」「ああ。行ってくるよ。」父親は手を軽く振ってドアノブに手をかけた。連続する野太い連射音。一瞬でドアは蜂の巣になった。父親は体に風穴を開けられながら倒れた。家中に貫通した弾が飛び、家具がいとも簡単に砕けていく。
少女も倒れた。母親はすぐに駆け寄って娘を抱いた。母親は頬を叩きながら「死なないで」と叫ぶ。
そこに乗り込んだのは反乱軍、6人。銃を手に持ちながら家具を乱暴に投げ捨て、鉄や食料、医療品を麻袋の中にしまい込んだ。
「使えるものは全て取るんだ。」
女の兵士が言う。彼女は父親を足で蹴った。そして目の前の母娘に目を向けた。物資を収集していた男兵士が聞いた。「こいつはどうする?」彼女は少し考えてから言った。
「使えない物、敵に利用される物は全て取り除く。エリカ、お願い。」
自動小銃を抱えた女が母娘の前に立つ。
「うん、カルラ。」
私は母娘に銃を向けた。照準越しに見える母親の目は助けてと明確に訴えていた。
連続する発射音、木の床に転がる薬莢。鼻に染み付く煙……。
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