第2話 包帯男カフェ

「元々つばさお婆ちゃまのお店だったんだよね?」

悠希はジュースをコップに注いで、愛里の前に置いた。


「そうよ。もっとモダンな内装で、昭和のスナックって感じだったの」

「住処を与えてやるってよぉ、恩着せがましいたらありゃしねぇ、あのババァ」

秀は、ゴンッとテーブルに缶ビールを叩きつけた。

「でも、カフェの経営と調理師の資格取って、すっごい頑張ってたじゃない」

愛里は、秀の背中をポンと叩いた。

「そりゃあお前、腹に颯汰がいたし、根無し草じゃいられねぇだろう?」


颯汰は、ピザにタバスコをかけながら、バーテンダー時代の秀の写真を横目に見た。

スッと、細身で長身の体つき、バンダナに隠された右目、露出した通った鼻筋とキリッとした左目、薄い唇はきゅっと結ばれ、クールそのもの、まさに昭和の伊達男の姿がそこにあった。


(イラつくぜ……俺、全然似てねぇし)

颯汰はピザを二切れ纏めて口に入れた。悔しさに任せて噛みしだく。


「お父さんが頑張ってる間、つばさお祖母ちゃまは何処にいたの?……まさか、一緒に暮らして……?!」

「んな訳ねぇだろう!!寒気するわ!」


「私の家よ。お母さんと、三人で暮らしてたの」

「ええっ?」

悠希は、目を丸くして秀を見た。

「お父さん……淋しい…」

「いや、それどころじゃなかったから…顔の手術して、暫く包帯男だったし」

※颯汰誕生編参照


秀は、忌々しげに奥歯を噛み締めた。

「それなのに、つばさのやつ、毎日毎日店に来てシゴキやがってよぉ、カフェが軌道に乗るまで愛里に会わせねぇってんだぜ?イカれてんだろ!!」

「ぷっ…」

愛里は思わず吹き出し、両手で口を覆った。

「わぁ〜、それは確かに酷い〜〜、僕だったら死んじゃう」悠希は颯汰をチラリと見て、その手を握った。


「ん〜〜〜♪俺も死んじゃう〜」

颯汰は悠希の手に指を絡めて額に頬擦りした。


カシャッ


「だから、写真撮るなっての!」

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